衛星の概要

衛星

the exterior of the satellite

「あかり」衛星は、液体ヘリウム及び機械式冷凍機を用いた冷却望遠鏡とそれを維持するクライオスタット低温容器のことから成るミッション部、および、姿勢制御やデータ送受信などを受け持ち衛星を維持するためのバス部から構成されていました。クライオスタットへの熱流入を極力小さくするために、ミッション部とバス部は独立した構造になっていました。衛星全体の高さは約3.7メートルで、総重量は952kgになりました。

the exterior of the satellite

衛星に電力を供給するソーラーバドルは軌道投入後に展開ソーラーパドルの幅は展開時には約5.5mになりました。されました。また、打ち上げ前には、望遠鏡を真空に保ち、余計な光が入らないようにするために、望遠鏡には蓋(アパーチャーリッド)がされていました。この蓋は軌道で姿勢が確立した後、観測開始前に放出されました。

「あかり」は JAXA 宇宙科学研究所の M-V ロケット8号機によって、2006年2月22日(日本時間)に鹿児島県内之浦(肝付町)から打ち上げられました。打ち上げ後の観測運用は相模原管制センター(SSOC)および内之浦宇宙空間観測所(USC)において行われました。


望遠鏡

mirror

「あかり」の望遠鏡は F/6.1 のリッチー・クレチアン(Ritchey-Chretien)式の光学系です。望遠鏡の焦点距離は4200mmで、主鏡の有効口径は68.5cmです。観測時には望遠鏡全体が極低温まで冷却観測時の望遠鏡温度は通常5.8K(摂氏-267.4度)でした。されました。これは観測にじゃまな望遠鏡自身からの熱輻射すべての物質がその温度に応じて放射している電磁波。をできるだけ抑えることが目的です。

望遠鏡は鏡(主鏡・副鏡)のほか、副鏡を支えるトラス(truss) や迷光散乱光など、光学系の設計どおりの経路を経ないで焦点に届く光。を防止するバッフル(baffle) などから構成されていました。トラスの材質には軽量で熱伝導の良いベリリウム(Be)が使用されました。

the back of the primary mirror

主鏡の材質は軽量で丈夫なシリコン・カーバイト(SiC)で、さらに軽くするために裏面が大きくくり抜かれた構造になっていました。これにより、直径が71cmもあるにもかかわらず、その重さは約11kgという軽量化を実現しました。SiC鏡が宇宙を飛ぶのは世界でも初めての例となりました。

主鏡の表面は、赤外線の反射率を向上させるために金(Au)でコーティングされていました。

クライオスタット

the cross section of the cryostat

クライオスタットのタンクには超流動液体ヘリウムが170リットル(打ち上げ時)積まれ、望遠鏡をはじめ、検出器等、観測装置全体を極低温観測装置のうち最も低い温度になるのは長波長側の遠赤外線検出器で、温度は2K (摂氏-271.2度)以下です。に冷やしました。

クライオスタットには液体ヘリウムのほかにスターリングサイクル機械式冷凍機が搭載されていました。機械式冷凍機の搭載により、液体ヘリウムの寿命を延ばし、宇宙へ運ぶヘリウムの量を少なくすることができました。「あかり」は液体ヘリウムと冷凍機を併用することで、約1年半、極低温状態を維持しながら観測を行いました。



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