「あかり」の観測成果

「あかり」宇宙で活発に星が作られた時代を確認

―波長15ミクロンの深宇宙探査―

「あかり」に搭載された近・中間赤外線カメラ(IRC)により、広い空の領域にわたり、15マイクロメートルで現在最も暗い銀河までの観測を行い、多くの銀河を検出しました。この結果は、宇宙では、約60億年以上前から数十億年にわたり現在より星が盛んに生まれていた時代があったことを示すものと考えられます。


星が盛んに生まれている活動的な銀河の光は、銀河中の星間物質により吸収され、多くのエネルギーが赤外線で放出されていると考えられています。遠くの銀河からの光は地球に届くまでに時間がかかるため、現在観測される光は、現在より昔の時代に放射された光です。遠くの銀河の昔の光は、宇宙膨張により赤方偏移し、波長の長い光として現在観測されます。ここでとりあげる15ミクロンの光で暗い天体を観測すると、遠くの銀河が昔発した光を捉えることができます。1995年に打ち上げられたヨーロッパの赤外線衛星天文台ISOの観測により15ミクロンで観測すると、暗い銀河の数が急激に増加している兆候が示唆されました。これは、約60億年前に元々7ミクロンで発した遠くの銀河の光の赤方偏移したものを見ていると考えられました。7ミクロンあたりでは、星間空間に存在する有機物が特有の光を発して、まわりの波長に比べて明るくなっています。この有機物の光は、星が盛んに生まれているところで強くなります。15ミクロンの観測はちょうどこの時期に星が盛んに生まれていて、この光が赤方偏移してきたところを捉えたと考えたのです。しかしISOの結果は非常に狭い空を観測し、わずか24個の銀河の観測から推論したものでした。遠くの銀河がどのくらいの数、存在しているかを知ることは、銀河がどのように進化してきたかを知り、宇宙の進化を理解する上で非常に重要な情報です。

図1に「あかり」に搭載された近・中間赤外線カメラ(IRC)による波長15ミクロンでの深宇宙探査の結果を示します。空の広さはISOの観測の3倍弱ですが、1/5の観測時間でおおよそ10倍の数の銀河(約280個)の検出に成功しました。この画像は、広い空の領域にわたり、15ミクロンで現在最も暗い銀河まで検出したデータです。この結果、ISOが示唆した15ミクロンでの銀河の数の増加を確実なものとしました。さらに、より暗い銀河も検出し、その数が減っていないことも明らかになりました。このことは、60億年以上前の過去にすでに銀河の活動度が高かったことを示唆する重要な観測結果です。「あかり」は、この他に2ミクロンから24ミクロンにかけて同じような遠い銀河の探査を行っています。これらの結果を合わせることにより、銀河が現在までにどのように進化してきたかを明らかにできると考えています。

Fig.1

図1. 「あかり」に搭載された近・中間赤外線カメラ(IRC)による15ミクロンの深宇宙探査画像。光っている天体はすべて銀河と考えられます。画像の大きさは約10分角です。

この研究は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)助手の和田武彦氏、同機構研究員の大薮進喜氏らが中心となって行っている研究です。

Materials

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