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Noct-Salamander Grand Pianoプロジェクトでは、物理学的アプローチにより既存のサンプリング音源(元音源)をリマスタリングし、楽器メーカーレベルの品質を有する新しいSFZグランドピアノ音源を製作しています。 Version 4では1音源をリリース、リラクゼーション音楽やジャズでの利用を想定し、鋭さを控えた明るく美しい音色に仕上げました。Version 5では複数の音源のリリースを予定しており、開発に取り組んでいます。
品質面においては、(1)オーバートーンのバランスおよびエンベロープ調整、(2)ベロシティレイヤごとの音質について高いレベルでの均質性・連続性の確保、の2点について徹底的に取り組みました。
元音源として、高い録音品質を有するSalamander Grand(広く使われているSFZサウンドバンク)を使用し、それに含まれる全480サンプリングデータを、1音源ごとに注意深くリマスタリングしました。処理システムの設定および調整に多大な時間を費やし、品質にパーフェクト(仕様上の限界レベル)を追求。音色の美しさについてはもちろん、レコーディング時に使われたピアノの状態(ハンマーの劣化など)に起因する音についてのレストア処理、録音時に生じたと思われるノイズの除去処理なども施しました。
成果物である SFZ+WAVサウンドバンク(48kHz24bit, サイズ:1.5GB) は無償(ライセンス:CC-by)で提供しています。さらに、ソースコード・パラメータファイルも全公開しています。
演奏者とリスナーの両方に喜んでいただける音源を目指し、 パーフェクトな品質への追及はこれからも続きます。 利用状況によっては仕様のアップグレードも考えられます。
CoolSoft VirtualMIDISynth を使い、クラシック名曲をいくつか用意しました。
小栗克裕氏 (プロの作曲・編曲及びピアノ奏者)
の許可を得て
MIDIデータ
を使用。本物の演奏をお聞きください。
FIRリバーブエフェクトに
Sazanami
を使用しています。イコライザは使用していません。
Images I, L. 110 - I. Reflets dans l'eau |
Suite bergamasque, L. 75 - III. Clair de lune |
Ballade, L.70 |
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Preludes, Book 1, L. 117 No. 8. La fille aux cheveux de lin |
Reverie, L. 68 | Arabesque No. 1, L. 66 |
Performance by (C) Katsuhiro Oguri. MP3ファイルの再配布を禁止します。
小栗克裕氏 (プロの作曲・編曲及びピアノ奏者)
の許可を得て
MIDIデータ
を使用。本物の演奏をお聞きください。
FIRリバーブエフェクトに
Sazanami
を使用しています。イコライザは使用していません。
Chopin - Prelude, Op. 28 No. 15 | Schumann - Kinderszenen, Op. 15 - 7. Traumerei | Liszt - Liebestraum No. 3, S. 541 |
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Performance by (C) Katsuhiro Oguri. MP3ファイルの再配布を禁止します。
オリジナルのSalamander Grandによるものも用意しましたので、聞き比べてみてください。
MIDIデータは
http://piano.s20.xrea.com/midi/
を使用しています。Rikako先生に感謝。
FIRリバーブエフェクトに
Sazanami
を使用しています。イコライザは使用していません。
Original Salamander Grand V.3 (MP3,48kHz) | Noct-Salamander Grand V.4 (MP3,48kHz) |
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注意:2つのMP3ファイルは、同一のMIDIデータ・同一のエフェクトによるものです。
音量・音質の均質性・連続性を確認してください。
Original Salamander Grand V.3 (MP3,48kHz) | Noct-Salamander Grand V.4 (MP3,48kHz) |
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Original Salamander Grand V.3 (MP3,48kHz) | Noct-Salamander Grand V.4 (MP3,48kHz) |
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このバージョンからは、音源#0 を元に、複数のピアノ音源を提供します。発音の遅延は、V.4 よりもさらに短くなっています。 bass/trebleのバランスを変えた複数のSFZファイルが含まれています。ファイル名に「Recommended」とあるものをまずお試しください。
オリジナルの Salamander Grand の音色を可能な限り変えずに、均質性・連続性を徹底的に追求した音源です。明るくフォルテ寄りの YAMAHA C5 の音色が正確に再現されます。
音源#0のローベロシティ側を柔らかめに調整し、オリジナルのSalamanderの弱点を解消したものです。
音源#1をさらにソフトにしました。ハイベロシティでは音源#0の音色を継承しています。
大型GPに近い音色で優しさを重視。リラクゼーション音楽用。最高ベロシティではV4に比べてインパクトのある音を再現でき、汎用性が広がっています。
各ベロシティレイヤ内の音量連続性を改善しました。
パッケージには、
bass/trebleのバランスを変えた5種類の SFZ ファイル、
ハンマーノイズおよびペダルノイズの設定を除いたSFZファイルが含まれています。
お好みで使い分けてください。
CC-by (オリジナル版と同じライセンス)
http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/
楽器への組み込みも歓迎します。書面などを必要とする場合、開発者までご連絡ください。
V3.0 (Nov.24,2023) * First release based on Salamander Grand Piano V3+20161209. V4.0RC1 (Mar.3,2024), V4.0RC8 (May.9,2024) * Applied 4 filtering with effective rate, reassigned WAV, adjusted all volume of WAV, erased noises and restoration of overtone/envelope F#1 and notes around C3. V4.0 (May.14,2024) * Amount of delay was equalized for each note. V4.1 (May.29,2024) * Improved volume continuity. * Testing the balance between bass and treble. V5.0beta1 soundbank #0:"Daylight" (May.31,2024) * Improved processing system to release multiple soundbanks. * Minimized amount of delay. V5.0beta2 (Jun.7,2024) * soundbank #0:"Daylight" -- This offers instrument manufacturer-level quality while maintaining the tone of the original Salamander Grand. * soundbank #1:"Twilight" -- The low velocity side of soundbank #0 was adjusted softly. * soundbank #2:"Moonlight" -- This provides softer sound than soundbank #1. Inherits the sound of soundbank #0 in high velocity. * soundbank #3:"Noct" -- This emphasizes gentleness with a tone similar to that of a large grand piano. Most suitable for relaxation music.
お手持ちの電子ピアノの音を、Noct-Salamander Grandに置き換えて、セミコンサートグランドピアノを構築してみましょう。
以下ではわかりやすい記事になるよう心掛けていますが、難しいと感じる場合はFrieve-A様の動画 を一度ご覧ください。基本的な知識が得られます。また、演奏者視点での 評価については Frieve-A様のレビュー動画 もご覧ください。
Noct-SalamanderGrandPiano_withoutNoise.sfz
」
を指定します(ドラッグアンドドロップでも可能です)。
以上で電子ピアノの鍵盤を使うと、Noct-Salamander Grandの音で演奏できるようになります。
なお、「Noct-SalamanderGrandPiano_withoutNoise.sfz
」は
ハンマーノイズおよびペダルノイズの設定を除いたものです。
当プロジェクトではこちらを推奨します。その理由は、アコースティックピアノの演奏ではそのようなノイズを
出さないように演奏するからです。
もし、ハンマーノイズおよびペダルノイズまで電子楽器で再現するなら、
キーのリリース速度とペダルの速度を検出し、それらに応じてノイズもコントロールすべきでしょう。
そのようにするとフォルテでの演奏ではノイズの音量が大きくなる傾向になりますが、
結果的には弦の大音量にかき消されてノイズは目立たなくなるため、やはりあまり重要でない、という結論になると考えます。
Noct-Salamander Grand Piano付属のSFZファイルは SFZ v1 で記述されているので、SFZがサポートされているすべてのソフトウェアで利用することができます。
ただし、SFZ v2 がサポートされているソフトウェアの使用を推奨します。
電子ピアノの音をアップグレード で紹介したフリーのSFZプレイヤー sforzando(スフォルツァンド) は SFZ v2 をサポートし、DAW等で使用できるプラグインが含まれています。
また、sfzformat.com にはSFZをサポートする プレイヤーの一覧 がありますので、「plugin」と表記のあるものは使える可能性が高いです(表記が無くてもプラグインを持つものがあります)。
プラグインが使えない場合は、 loopMIDIを使う方法もあります。つまり、PC内で
DAW・シーケンサ(loopMIDIに対してMIDIデータを送信)
↓
loopMIDI
↓
sforzando(loopMIDIよりMIDIデータを受信)
という構成を作ります。
SFZ v1 のみをサポートするプレイヤーの中には コントロールチェンジ64(CC64; ダンパーペダル) の解釈について、鍵盤楽器を考慮していないものが多く見られます。 ペダルを踏んで、同じキーをスタッカート連打したとき、 ペダルを離すと音が止まるはずですが、そうならないという問題です。 つまり、ペダルONの状態で同じキーの連打では最後のノートオン以外については 基本的に「強制ノートオフ」しなければならないのにそうなっていないため、 ペダルオフで「強制ノートオフ」されなかった音が残ってしまうのです。 音楽的には、楽曲の妙な所で不協和音が…、という事態になります。
かなり有名な
CoolSoft VirtualMIDISynth
や
Keppy's MIDI Converter
でCC64の解釈に問題が見受けられました(このWebページのサンプル曲では、CC64を解釈・ノートオフに変換し、この問題を回避しています)。
SFZ v2 ではこの問題に関連する
note_polyphony
パラメータが追加され、同じキーが連続した場合の動作が規定されるようになりました(デフォルト動作はnote_polyphony=1
)。
したがって、SFZ v2 に対応したソフトウェアであればこの問題は見られない可能性があります。
プレイヤー選びは、この点にまず注意すべきでしょう。SFZ v1対応ソフトウェアでも、設定でこの問題を回避できる可能性もありますので、関連しそうな設定項目はしっかり目を通しておきましょう。
このプロジェクトでは新たなレコーディングをせず、高い録音品質を有する Salamander Grand サウンドバンクをデジタル処理する事で新たなピアノ音源を開発しています。
"Salamander Grand Piano" Webサイト:
https://freepats.zenvoid.org/Piano/acoustic-grand-piano.html
音源1つ1つの均質性・連続性について高いレベルを確保するため、Salamander Grandのすべての基本WAV音源をリマスタリングしました。 SFZファイルを改変するのではなく、1音ごとに注意深く設定されたフィルター(場合によっては多段フィルター)を480個のWAVファイルに対して適用しました。
overtone_config.txt
" で設定当然ですが、参考にしたのはコンサート用のグランドピアノの音色です。 大型グランドピアノの美しい音色は、低音から高音にかけてオーバートーン(上音)が急峻に減少することに起因します。 これは物理学的に当然の帰結であるため、大型ではないグランドピアノの良好なサンプリングデータがあれば、その周波数成分を調整することで、大型グランドピアノに極めて近い音を得ることができます。 本プロジェクトでは、音階とベロシティによるオーバートーン量の調整を以下のように行っています:
自然な音質を追求するため、フィルタリングとエンベロープ修正のレベルは音階に応じて緩やかに変化させてあります。
オリジナルの音源は YAMAHA C5 のサンプリングですが、 これらの処理によって、より大型のグランドピアノの音色に近づきました。
バージョン4ではさらに、音階における音質・音量の均質性・連続性を細かく調整しています:
Salamander Grandには、「C3」付近と「F#1」の音質に大きな問題があるために音質の連続性がそこで途切れていたのですが、上記最後の項目に示した復元処理により本来求められる音が得られるようになって、一気に音源全体の完成度が上がりました。
「C3」「F#1」の復元処理はたいへんな困難を伴いました。 「C3」は打弦時の異音、オーバートーン量の不足、オーバートーン量遷移の異常など多数の問題を含んでいたため、フェード、イコライザ、ミックスの3種の処理を組み合わました。それで何とかなったのも、「C3」の場合は復元に必要な周波数成分が残っていたからです。しかし、「F#1」はそうはいきませんでした。試行錯誤を繰り返しましたが、まともな音は得られませんでした。レコーディングに使用したピアノのハンマーの位置がおかしいか弦の異常が原因と考えられますが、「F#1」には本来必要な周波数成分が含まれていない事に気が付きました。原音のみでは復元不可能なので、結局、「A1」から生成しました。言われなければ気付かないレベルにまで作りこんでいますが、この音だけはレコーディングしたいものです。
サンプリングに使用された C5グランドピアノ は、かなり正確に調律されていますが、A0、C1、D#1、F#7、C8などの超低音や超高音にわずかなエラーがみられましたので、標準ピッチに修正しています(tuned.txt)。 ピッチ調整は YAMAHA EA1 の内蔵サウンドバンクを参考にしました。
調整作業においては波形やスペクトルも多用しますが、最終的には1つ1つの音や均質性・連続性を聴感で評価します。 調整・確認には、USBオーディオインタフェース Roland Rubix22と、スタジオモニターヘッドホン SONY MDR-CD900ST を主に使用しています。 それに加え、最終確認時にはBOSE 101ITスピーカーも使用しています。
元音源のライセンス条項は改変についての明記を求めていますが、本プロジェクトではそれだけではなく改変内容についても明らかにする方針をとりました。 このようにした理由は、Noct-Salamander Grandの持つ音質が元音源のそれとは大きく異なるため、不必要な疑いを持たれる事を避けるためです。 すべての処理をスクリプトで行い、音声データ処理にはオープンソースのFFmpegを使用しました。 全コードは、GitHubリポジトリで公開しています。 詳細は、src/build.sh をご覧ください。 overtone_config.txtのパラメータを変更し、"make noct48"を実行すると好みの音色のピアノ音源を生成することもできます(オリジナル版のSalamander Grandを入手する必要があります)。VSTプラグインのGUIやSFZファイル内でのフィルタ設定などでは不可能なレベルでの複雑で細かな音質調整が可能です。 なお、48kHz版一式のビルドには、約12分を要します(Core i5-8250U CPU @ 1.60GHz)。
オリジナルのサウンドバンクを開発し、当プロジェクトに助言くださった Alexander Holm 氏 に感謝申し上げます。 数多くのフリーのサウンドバンクを探しましたが、 十分なクオリティを備え、開発の自由度があるものは Salamander Grand Piano だけでした。
演奏データの使用について許可くださった、 小栗克裕氏 (プロの作曲・編曲及びピアノ奏者) に感謝いたします。 本サイトにおいて理想的な試聴セクションが実現しただけでなく、 音源の開発においても調整結果の確認に大いに役立ちました。
Frieve-A氏 (Deep Learningのスペシャリスト)には、開発中の音源について重要な評価をしていただき感謝しています。また、同氏のYoutube動画は当Webサイトを作成する上で大きな助けとなりました。
本音源を開発するために以下のソフトウェアを使用しました:
開発者ならびにそれらに関わったすべての皆様に感謝いたします。
Chisato Yamauchi, Misato Astronomical Observatory
cyamauch (at) ir.isas.jaxa.jp
x.comのアカウント 999irf
Last Modified: 7 Jun. 2024