「あかり」の観測成果

初めて赤外線でとらえた小マゼラン雲の超新星残骸

―小マゼラン雲中の超新星残骸の赤外線での検出―

3マイクロメートルから11マイクロメートルの赤外線で、初めて小マゼラン雲の中の超新星残骸を検出し、超新星残骸と周囲の星間物質との相互作用を明らかにしました。


小マゼラン雲は南半球で観測される、われわれの銀河系からおよそ20万光年の距離にあるお隣の小さな銀河です。今回「あかり」に搭載された近・中間赤外線カメラ(IRC)の観測により、B0104-72.3と呼ばれる超新星残骸を波長3, 4, 7, 11ミクロンで検出することに初めて成功しました。これは小マゼラン雲中の超新星残骸をこの波長帯で検出した初めての例です。図1に「あかり」観測による超新星残骸B0104-72.3のカラー合成画像を示します。画像中央付近に斜めの楕円形の両端の部分が光っている構造が見られます。これが約60x100光年に広がった超新星残骸です。

Fig.1

図1. 「あかり」搭載近・中間赤外線カメラの観測による小マゼラン雲中の超新星残骸B0104-72.3の画像の合成カラー図(青:4ミクロン、緑:7ミクロン、赤:11ミクロン)。中央部で約60 100光年の大きさに広がった楕円形の構造が見られます。白の横棒は30光年の大きさを示します。

超新星残骸は超新星爆発が起きたあと、星のガスが膨張し星間空間に吹き飛んでいった残骸で、質量が太陽より大きな星が進化した最後の姿です。超新星で核合成された元素を星間空間にまきちらし、爆発のエネルギーで星間物質を大きく乱すため、銀河が進化していく過程で非常に重要な役割を果たしていると考えられています。しかし、星間物質への影響をよく調べることのできる赤外線観測が少なく、実際どのように星間物質が影響を受けているかについては、十分な理解が得られていませんでした。今回検出された赤外線は、爆発して膨張しているガスが周囲の星間物質とぶつかり、相互作用を起こし、球殻状に光っているものと考えられます。「あかり」の観測は4つの波長で超新星残骸を検出しており、その明るさの関係から、周囲の分子雲と相互作用して衝撃波を起こしていることが結論されました。このことは、元となった超新星は質量の大きな星であったことを示唆します。

B0104-72.3は約1万年前に爆発した超新星の名残と考えられていて、電波、X線で知られた超新星残骸ですが、どちらの波長でも特に明るいということはありません。「あかり」の観測は、超新星残骸と星間物質の相互作用の性質を診断し、星間物質の進化過程の研究に大きく貢献することが期待されます。「あかり」はこのような目的で多くの超新星残骸の赤外線観測を進めています。

この研究はソウル大学のKoo Bon-Chul教授のグループが中心となり行っている共同研究です。

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