「あかり」の観測成果

星生成が内より外で活発:風変わりな渦巻銀河M101

M101 銀河は、おおぐま座に位置する渦巻銀河です。地球からの距離がおよそ2400 万光年で、直径が17万光年と、我々の銀河系のほぼ2 倍もある巨大な銀河です。回転花火のように広がった渦巻腕には、高温の若い星々が数多く存在し、中でも、銀河外縁部の渦巻腕には巨大な星生成領域が点在しています。こうした特徴をもつM101銀河の内部で、どのように星生成活動が起こっているのか調べるために、「あかり」衛星に搭載されたFISの4 つの波長帯(65、90、140、160マイクロメートル)で高解像度の観測を行いました。この観測データをから、星生成領域に存在する若い高温の星で暖められた塵(暖かい塵)と、太陽のような普通の星で暖められた塵(冷たい塵)の空間分布を、初めてきれいに示すことができました。


図1は、左側が冷たい塵の分布を、右側が暖かい塵の分布を示しています。銀河内での分布がよくわかるように、可視光や紫外線のデータと組み合わせて、疑似カラーで表した絵が図2です。暖かい塵は渦巻腕に沿って分布し、特に銀河外縁部付近では斑点状の分布が見られます。この斑点は、巨大な星形成領域の場所に位置しています。一方冷たい塵は、銀河中心付近に多く集まり、銀河全体に広く分布しています。

Fig.1

図1. FISが明らかにした、M101銀河内部の冷たい塵(左)と暖かい塵(右)の分布(Suzuki et al., PASJ AKARI special issue, 2007)

Fig.2

図2. FISのデータから求めた暖かい塵(赤)と冷たい塵(青)に加えて、可視光(緑:星の分布を表す)および遠紫外線(水色:若い星の分布を表す)を加えたM101銀河の疑似カラーイメージ。可視光はDSS Rband (The National Geographic Society) 、遠紫外線はGALEX (NASA) のデータを使用。

暖かい塵の量は高温の若い星の生成量に、冷たい塵の量は星生成に必要なガスの量に関連するものと考えられます。このことから、冷たい塵の量に対して、より多くの暖かい塵が存在している領域で、活発な星生成が起きていると考えられます。そこで、M101銀河内の星形成の活動性を調べたところ、銀河外縁部に存在する全ての巨大な星形成領域で、銀河中心付近よりも活発に星生成が起きているということが分かりました。我々の銀河系のような渦巻銀河は、一般に銀河中心付近ほど星生成が盛んに起きていると考えられています。M101銀河は、我々の銀河系のような渦巻銀河であると考えられていますが、非常に活発な星生成領域が銀河外縁部に存在するという風変わりな銀河であることが、「あかり」の観測によって明らかになったのです。

M101銀河は、過去に伴銀河と潮汐相互作用を起こしたことがわかっています。それによって巻き上げられた水素ガスが、M101銀河の外縁部に速い速度で(150km/s程度)で降り注ぎ、それによって活発な星形成が引き起こされているのではないかと考えられています。実際、水素ガスが外縁部に降り注いでいることが観測的に確認されてますが、 なぜ外縁部のみなのかはよくわかっていません。このような活発な星形成を引き起こす物理的背景が何なのか、FISはM101銀河以外にもいくつかの近傍銀河の観測を行っており、「あかり」はこの問題を考える貴重なデータを提供してくれました。

この研究は、鈴木仁研(東京大学大学院理学系研究科)らによる研究です。

Materials

↑top