「あかり」の観測成果

赤外線天体カタログによる研究の第一歩、星と銀河の見分け方

「あかり」の遠赤外線天体カタログを使った研究の第一歩は、観測された天体の分類です。小さな点として写った天体が私たちの銀河系の中にある恒星なのか、それともずっと遠くの銀河なのか、すぐには見分けがつきません。長い歴史があってすでに非常に多くの天体が調べられている可視光での観測の助けを借りたいところですが、赤外線天体は可視光では見えないことも多く、簡単ではありません。

ポーランドのポッロ、リプカと名古屋大学の竹内は、「あかり」の遠赤外線データだけから分類する方法を発見しました。ポッロらはこれまでの観測でその正体が知られている数千個の天体の遠赤外線での「色」を調べました。天文学で言う「色」とは、波長の短い光と長い光での明るさの比です。波長が短い光が相対的に明るいと「青い」と言い、その逆は「赤い」と言います。「あかり」の全天サーベイは遠赤外線だけでもIRASよりも多い4つの波長で行われたので、いろいろな波長の組み合わせで天体の「色」を調べることが可能です。図1の右図の例では、波長65マイクロメートルでの明るさ(対象の天体から単位時間、単位面積、単位周波数当たりにやってくる赤外線のエネルギー)の、波長140マイクロメートルでの明るさに対する比を縦軸に、やはり波長65マイクロメートルでの明るさの、波長90マイクロメートルでの明るさに対する比を横軸にとっています。縦方向では下に行くほど「赤く」、横方向では左に行くほど「赤い」ことを示します。そして銀河系内の星であることがわかっている天体が青で、銀河であることがわかっている天体が赤でプロットされています。この図では銀河と星のデータ点は、実線で示した境界を境にほぼ分かれて集まっていることがわかります。このような方法で、銀河の95%以上、星の80%以上を選び出すことができるのです。

以上の方法を適用することで、私たちは膨大な数の「あかり」カタログの天体を、まず大雑把に分類することが可能となり、研究のスタート地点に立つことができました。また将来の赤外線天文ミッションでの天体分類法に対する指針をも手にすることができました。

Fig.1a Fig.1b

図 1: ポッロ、リプカ、竹内が提唱した天体分類法。「あかり」遠赤外線データの波長ごとの明るさの比(色)をうまく選ぶと、星と銀河を区別することができる。右は実際のデータのプロット例(青が星、赤が銀河)。銀河の95%以上が境界線(実線)の左下に、星の80%以上が境界線の右上に位置する。

Materials

  • 図 1 左 (© 核物理学研究所およびヤギェロニアン大学, 名古屋大学, ISAS/JAXA)
  • 図 1 右 (© Pollo et al., 2010, A&A, in press)
↑top