「あかり」の観測成果

赤外線でしか見えない隠された星形成

銀河の中で水素ガスの雲から星を形成する活動の活発さ、またその歴史を知ることは、宇宙初期に生まれた銀河がどのように現在の姿になったのかを知るために重要です。また地球や私たちの体を形作るのに必要な酸素、炭素、鉄などの元素は、星の中の核融合反応によってだけ作られるため、最初はほとんど水素とヘリウムしかなかった宇宙でこのような元素がどのように作られてきたのかを知るためにも、星形成活動を調べることは重要です。

名古屋大学の竹内らは「あかり」遠赤外線全天サーベイデータと紫外線、可視光および近赤外線での銀河サーベイを組み合わせて、現在の宇宙にある多数の銀河の星形成活動を調査しました。星は塵(固体の微粒子)を含む濃い水素ガスの雲の中で生まれます。新しく生まれた星が出す紫外線や可視光は、ガスや塵に吸収されるためガス雲の外には出られず、雲が晴れるに従って観測されるようになります。これに対して、周囲の塵が誕生した星の光を吸収し暖められて放射する赤外線は、高い透過力のために雲の外に出ることができ、雲の中の星形成の検出を可能にします。ある銀河での星形成活動の活発さは、雲の中での星形成を示す赤外線のデータと、若い星を直接見る可視光や紫外線のデータを総合して求めることになります。では、直接見える星から求めた星形成活動と、赤外線による雲の中の星形成活動の割合はどれくらいでしょう。竹内らの研究は、これを明らかにしました。

私たちの銀河系では、毎年太陽3個程度、という比較的穏やかな星形成が起きています。竹内らの研究結果は、銀河系よりも6倍程度以上活発に星を作っている銀河では、その星形成活動のほとんどが塵に隠された雲の中で起きており、赤外線でしかそれを知ることができない、というものでした。星形成の最盛期は、赤外線でしか見えないのです。これはまた、赤外線で見れば活発な星形成活動を見落とすことは無く、宇宙の星形成史を調べるには赤外線が非常に有効だということでもあります。

Fig.1

図 1: 「あかり」赤外線データを含めて推定された銀河の星形成の全活動性に対する、可視光で観測できるものの割合。横軸は1年間に太陽何個分の星が作られるかを対数目盛りで表したもので、私たちの銀河系は太陽3個分程度の星を毎年生み出している。星を活発に作っている銀河ほど、可視光ではそれを見ることができず、赤外線でしか全貌をとらえることができないことがわかる。

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