「あかり」の観測成果

「あかり」によって解き明かされる宇宙の星形成史

前項で紹介した個々の銀河での星形成活動の調査を発展させ、宇宙の歴史の中でいつ頃星が生まれたのか、宇宙の星形成史を理解することは天文学の大きな目標の一つです。赤外線で観測すれば、塵に隠されているものを含め星形成活動の全貌を明らかにすることができます。

しかしながら、宇宙の星形成史の原点ともいえる、今現在(すなわち近傍宇宙)の星形成密度は、25年以上前のIRAS衛星によって短い波長のデータのみ(100マイクロメートル以下)を用いて測られた不定性の大きいものでした。ハワイ大学の後藤らはより星形成活動を見積もるのに重要な長い波長まで(9〜160マイクロメートル)を網羅する「あかり」の全天サーベイデータを利用することにより、より正確に、星形成に起因する赤外線が宇宙の単位体積当たりどれくらい放射されているか(全赤外線密度)を見積り、これから宇宙の単位体積当たりどれくらいの割合で星が生まれているか(星形成密度)を求めました。その結果は、100万パーセク(約300万光年)立方あたりで、1年に太陽0.015個の割合(言い換えると60〜70年に太陽1個の割合)で星が生まれているというものでした。

後藤らによってこれまでより正確に求められた現在の宇宙の星形成密度を、「あかり」による別の観測で求められた遠方宇宙の星形成密度と比較することにより、宇宙の星形成史が現在から106億年前まで遡って明らかになりました。図3に「あかり」によって測定された宇宙の星形成史を示します。約100億年前の宇宙では、現在の20倍以上も星形成活動が活発であったことがわかりました。また超大光度赤外線銀河と呼ばれる赤外線で非常に明るい銀河(太陽の一兆倍の明るさ)の寄与は、約100億年前の宇宙では現在の10倍以上もあったことがわかりました。

Fig.1

図 1: 「あかり」によって測定された宇宙の星形成史。☆印で示した部分(z=0)が本研究によって精密に測定された現在の星形成密度。その右側(z > 0)のデータ点は、同じく「あかり」深宇宙探査のデータによる宇宙の過去の星形成。 横軸は宇宙膨張による赤方変移を表した量で、宇宙の年齢の指標となる。赤の☆印は銀河全体による星形成密度、青とオレンジの☆印は、爆発的な星形成を起こして赤外線で明るく輝く「赤外線銀河」だけの値を抜き出して示したもので、オレンジは太陽の放射の1兆倍を越えるエネルギーを赤外線として放射する超大高度赤外線銀河、青は1兆倍以下の大高度赤外線銀河のものである。

Materials

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