衛星運用と観測

衛星の軌道と姿勢モード

「あかり」衛星は高度約 750 km の太陽同期極軌道を取り、北極と南極を結んだ昼と夜の境目に沿って地球を周回しました。この軌道を一周するのにかかる時間は約100分です。

「あかり」の観測は、サーベイモード(Survey Mode)とポインティングモード(Pointing Mode)という2種類の衛星姿勢モードで行われました。

サーベイモード

Survey Mode

サーベイモードは「あかり」の基本観測モードで、望遠鏡の向きが、太陽とも地球の中心方向とも常に垂直になるように制御されました。従って、衛星が地球を一周するごとに、望遠鏡も天球上を一周観測しました。一方、地球から見た太陽の方向は一年で一周することから、サーベイモードでは半年間で全天を観測ただし、月が見える期間などはサーベイ観測ができず、欠落領域になってしまいます。欠落領域は次の機会(半年後)を待って観測されましたが、わずかに欠落領域が残りました。することができました。

ポインティングモード(指向観測モード)

Pointing Mode

ポインティングモードは、天球上のある方向を、長時間積分観測あるいは分光観測を行いたい場合に使用されました。ただし、いつでも好きな方向に望遠鏡を向けることはできません。なぜならば、望遠鏡を低温に保つために、太陽や地球の光が入射する方向には望遠鏡を向けることができないからです。この制約のため、1回のポインティング観測ポインティング観測は1軌道周回あたり最大3回まで行うことができました。で使える時間は最大約10分でした。


観測期間

「あかり」の主ミッションの観測寿命は、冷却剤である液体ヘリウムがすべて蒸発してしまうまでの時間で決まります。打上げからの液体ヘリウム保持期間は550日でした。

打ち上げ後の衛星運用は、約2ヶ月間の試験観測期間(PV Phase)を経て、最初の半年はサーベイ観測を中心として行いました(Phase 1)。それに続いて、液体ヘリウムが枯渇「あかり」には、液体ヘリウムだけでなく機械式冷凍機が搭載されていました。冷凍機の使用によりヘリウムの消費量を抑えることができました。するまでの期間(Phase 2)は、Phase 1 で観測できなかった領域の観測を行うほか、ポインティング観測で様々な天体を狙いました。さらに、液体ヘリウムが無くても冷凍機だけで使用可能な IRC の近赤外線カメラは、液体ヘリウム消失後も観測を続けました(Phase 3)。「あかり」の科学観測は2011年5月まで続けられました。


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