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SPICAサイエンス検討会 趣旨説明書



      SPICAサイエンス検討会 趣旨説明書  (2019年4月24日)     >>> PDF版

      1. 背景

      • SPICAは「宇宙が重元素と星間塵により多様で豊かな世界になり、 生命居住可能な惑星世界をもたらした過程を解明すること」を科学目的とする口径 2.5m の大型冷却赤外線天文衛星であり、 波長 12-350 ミクロンの範囲で革新的な観測感度(注1)を実現する計画である。 この SPICA を2020年代中に打ち上げることを目指して、日欧の協力により開発が進行中である。
      • このSPICAを実現するためには、欧州宇宙機関の宇宙科学プログラムであるコスミックビジョンの中型ミッション5号機(M5)として採択されることが必須である。 このM5に応募があった 25 の計画に対する一次審査では、SPICAを含む3つの計画が2018年5月に採択された。 この中から1つの計画が2021年の夏頃に採択される予定である(注2)。
      • このような欧州側の活動と平行して、我が国でもコミュニティ全体の意向を SPICA プロジェクトに反映させるため、 宇宙研所長の諮問機関として、SPICA 研究推進委員会が2018年8月に発足した(注3)。 この委員会の議論に基づき、国内研究者による新たなサイエンス検討を以下の通り行おうとしている(注4)。

      2. 目的

      • ESA における Cosmic Vision M5 selection に SPICA が勝ち抜くため、SPICA のサイエンスを強化する必要がある。 2021年夏頃予定のfinal selectionに先立ち、ESAの SPICA Science Study Team (SST) が複数の working group を組織して Yellow Book を編纂しようとしている。 この WG には日本からも参加が期待されているが、より広いサイエンス検討を日本国内でも進め、日本からSST WGに参加する研究者を通して ESA SST の Yellow Book 作成に寄与する。
      • これまで SPICA との接点が必ずしも多くなかった研究者も含め、広く国内の方々にこの SPICA サイエンス検討会に加わってもらうことで、 多くの国内研究者にSPICAについての理解と期待を深めてもらう。

      3. 目標

      • 各分野ごとにSPICAが行うべきサイエンスを洗い出す。
      • 洗い出したサイエンスについて、どのような観測をどの程度行えばどの程度のインパクトが期待できるかを明らかにする。
      • SPICAの運用や装置仕様に対しての要望や提言があれば、とりまとめる。
      • 以上の検討内容を、必要な図表と合わせて日本語でドキュメント化する。その際、詳細は不要だが、記述内容の意図を理解するために必要な程度のbackgroundについても記載する。  (ドキュメントの体裁・様式・分量などについては今後の相談により決定する。)

      4. 体制

      • SPICAサイエンス検討会の活動を実施するために5つの班(銀河BH進化、近傍銀河、星形成、惑星形成、太陽系と系外惑星)を設け、それぞれに班長を置く。
      • 各班は数名から十名程度の班員で構成する。 班員は広くtennetや光赤天連・宇電懇・理論懇などのMLで募集すると同時に、班長やSPICA研究推進委員会の委員からも個別に打診する。班員は大学院生やポスドクも可とする。
      • 班長および班員の一部の方々には、ESAのSSTが編纂するYellow Bookの作成を目的としたworking groupへの参加も期待される。
      • SPICA研究推進委員会は、上記の班長を通して、SPICAサイエンス検討会の活動をモニターし、必要に応じて研究推進委員会と班長の間で相談や調整などの場面を設ける。
      • 検討のために必要な旅費は、真に必要な分についてはSPICAプロジェクトによりサポートが可能(応相談)だが、各班での議論はリモート会議を主とする事を想定する。

      5. スケジュール案

        2019年4月8日第3回SPICA研究推進委員会で検討会の今後の進め方を議論および確認
        2019年4月末まで検討会活動の方針の議論、班長(5名)の依頼と確定
        2019年5月末まで班員確定、班長と班員を対象としたSPICA説明会、検討活動開始
        2019年7月頃?第4回SPICA研究推進委員会で班長から活動の初期段階の報告を受け議論
        2019年9月天文学会春季年会企画セッションに申し込み(要検討)
        2019年10-11月頃?検討会中間報告会(班員以外にもオープンにした会とするかは要検討)
        2020年2月末頃まで検討とりまとめ
        2020年3月天文学会春季年会企画セッションで検討結果を報告(要検討)
        2020年5月末頃まで?ドキュメント化を完了させる

      =====
      (注1)
      SPICAには中間赤外線観測装置SMI、遠赤外線観測装置SAFARI、遠赤外線偏光撮像装置B-BOPの3つの観測装置が搭載される予定である。 これらの性能の概要については、以下のウェブページを参照されたい。 (注2)
      M5候補としては、SPICAに加え、金星探査機EnVisionと突発天体観測衛星Theseusの計3計画が一次審査で選抜されている。 これらの詳細については、以下のウェブページを参照されたい。 (注3)
      SPICA研究推進委員会の設置目的や委員リスト、最近の活動状況などについては、以下のウェブページを参照されたい。 (注4)
      SPICAのサイエンス検討はこれまでにも光赤天連タスクフォース等によるものが行われてきているが、 SPICAが今の仕様になってからコミュニティにより網羅的にサイエンスの検討が行われた事はなく、今回新たにサイエンス検討を行う必要性が強く認識されている。 なお光赤天連タスクフォースによる検討の報告書は以下から参照できる。