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SPICA コラボレーション会議 開催報告(2020年3月9-11日)

SPICA collaboration会議

2020年3月9日から11日までの3日間、SPICA コラボレーション会議が開催されました。 オランダ・フローニンゲンのオランダ宇宙研究所(SRON)にて開催予定でしたが、新型コロナウイルス COVID-19 がアジアでの拡大を見せ、欧州も一部の国が外出自粛・自宅勤務を始める難しいタイミングと重なりました。 会議直前に、テレビ会議システムによるリモート開催を軸として会議を実施することが決断されました。 SPICA として100名を超えるリモート会議は初めてでしたが、主催者の Peter Roelfsema による会議ルールの設定と周知徹底により、技術的にも会議進行にも大きなトラブルもなく、瞬間最大参加数140名ほどのリモート会議を大変スムーズに開催することができました。 直前に現地参加を断念した参加者が多いなか、日本からは金田(名古屋大)、本田(岡山理科大)、東谷(JAXA)が現地にて参加しました。 日本国内では、宇宙科学研究所や名古屋大などの機関単位での参加に加え、SPICA 研究推進委員会および SPICA サイエンス検討会のメンバーのリモート参加がありました。 オランダ国内でも、開催機関の SRON 以外では、欧州宇宙機関 ESA は出張禁止によるリモート参加となり、フランスは多くが自宅からのリモート参加、イタリアが閉鎖直前の研究機関からリモート参加、アメリカ・カナダ・台湾などからもリモート参加がありました。 恒例の集合写真の代わりに、スクリーンショットによる集合写真タイムを設定し、テレビ会議に皆の顔を映したうえでリモート集合写真を撮りました。

サイエンス関係者は、1日目は SPICA サイエンス検討報告書(イエローブック)のサイエンスセクションに盛り込む主要なサイエンス課題の内容について議論を行いました。 今回のコラボレーション会議で内容をほぼ確定し、今後は内容のブラッシュアップに集中することになっています。 惑星形成ワーキンググループでは、日本からは野村(国立天文台)が水蒸気・水氷の観測による円盤から惑星に至る水の軌跡、本田が円盤鉱物学について短時間講演を行いました。 2日目の同分科会では、各自の進捗報告に加え、仮想的な大規模観測計画の具体化に向けて、観測ターゲットリスト、観測モードの選定の議論を行いました。 今後も毎月1回の会議を行うこととなりました。3日目、太陽系・系外惑星ワーキンググループ分科会では、平野(東京工業大)の取りまとめの下、 複数の日本の若手研究者のサイエンス提案が紹介されました。 最後の全体会議では、各ワーキンググループから観測装置グループへの質問とその議論がなされました。観測により達成できるコントラストや、様々な影響によるスペクトルのゆがみの評価などについて、引き続き観測装置グループとコンタクトしつつ実現可能性を見極めていくこととなりました。 銀河関係のワーキンググループでも、遠方銀河、近傍銀河、銀河系の各セッションに多くのメンバーが参加して議論が行われました。今回は共同セッションも設けられ、普段は接点があまりないと思われる著名な研究者の間で議論が交わされていたのが印象的でした。 リモート会議のために、多忙な方でも参加しやすかったという利点だと思います。が、聴衆の表情が見えないこともあり、これまでの対面会議に比べると議論が白熱しないという物足りなさもありました。 観測装置関係者もサイエンス会議と同時並行で、技術検討会議を行いました。 3月末にESAのミッション・コンソリデーション・レビュー(MCR)開始を控え、縦置き配置に変更された望遠鏡に対応した光学、構造、熱、エレキ、など多岐にわたる観測装置の技術的成立性検討の状況を議論しました。 MCR に向けた調整はほぼ収束し、これをもとにレビューのための文書群(データパック)の作成が進められました。(本田、金田、東谷)

(文中敬称略)


 
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SPICA、横のものを縦にする! -日欧共同検討結果報告- (2020年1月)

昨年来の日欧共同の検討の結果、ESA Cosmic Vision M-Classの第5番目のミッション(M5)の最終選抜に向けて、望遠鏡を正立させた配置で詳細検討を進めることになりました。思い起こせば20年以上前から始まったSPICAの初期検討以来、SPICAの望遠鏡は「縦置き」でした。つまりロケット機軸に平行に上向きに望遠鏡が向き、横から太陽が照射する方式で検討が進められてきました。しかしながら2014年に欧州宇宙機関ESAとJAXAがSPICAを共同で検討することになり、そのために行われた技術検討であるCDF(Concurrent Design Facility)Studyの際に、Planck衛星などで技術的に経験豊富な横置きで検討を行いました。その後、ESAのM5ミッション候補に選ばれ、引き続き「横置き」を基本としてSPICAの検討を進めてきました。しかしながら昨年後半からの欧州メーカー検討の際に、「縦置き」方式も検討対象とすることになりました。日本のメーカーにも両方式の検討を進めてもらい、慎重に考慮した結果、今後の日欧共同検討は「縦置き」を検討対象とすることになりました。つまり、最初は縦だったものが、しばらく横になっていましたが、再び縦に戻った訳です。SPICAの衛星設計は二転三転(七転び八起き?)しているのではないかとご心配をかけているかもしれません。しかし、SPICAは日本の宇宙科学としては最大規模、最長期間のプロジェクトです。できる限り広い視野からできる限りの検討を尽くして、最後に最も良い形で実現することが、日欧チームメンバーの共通の認識です。(芝井) [ISASニュース2020年02月号より抜粋]

昔の縦置き
昔の縦置き

 
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SPICA国内サイエンス検討班中間報告会 開催報告(2019年11月08-09日

サイエンス検討班中間報告会 サイエンス検討班中間報告会

11月8-9日に 宇宙研において、SPICA 研究推進委員会がイニシアチブをとってすすめている「SPICA国内サイエンス検討班」の中間報告会が開催され、大学・研究機関から約40名の参加をもって活発な議論が行われました。

宇宙科学研究所ではSPICA計画の推進に当たり、日本の様々な分野の研究者と情報を共有し、また関連するコミュニティにおける科学要求や、また、科学運用の在り方などを、広く議論するため、SPICA研究推進委員会(長尾透委員長)を設置しています。

SPICA研究推進委員会による「SPICA 国内サイエンス検討班」の設置の呼びかけに呼応した若手研究者を多く含む約70名からなる検討班が発足し銀河・ブラックホール進化、近傍銀河・銀河系、星形成・星間媒質、太陽系・系外惑星、そして、惑星形成の5つの検討グループに分かれて、SPICAに期待される科学成果をより幅広く検討し、さらに、その成果を報告書にまとめることをめざしています。同時に、この活動には、ESA-JAXAが組織する国際 SPICA Science Study Team および Science Working Group への活動に際して国内研究者のより積極的な参加をすすめる役割もまた、期待されています。

今回の中間発表会では、これまでの科学提案をよりふかめる検討や、これまで議論されていなかった新しい角度からの観測提案を含め、さまざまな課題についての提案と SPICA での観測可能性についての議論が行われました。最終報告書にむけたとりまとめのプランについても相談し、各分野で議論される科学的視点をまとめたアピーリングな図を作成することも決まるなど、積極的な交流が行われました。(山田)


 
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宇宙科学研究所特別公開2019(2019年11月01日)

ISAS特別公開 2019 ISAS特別公開 2019

毎年恒例の宇宙科学研究所相模原キャンパスの特別公開が、2019年11月01日(土)に開催されました。SPICAチームでは、SPICA望遠鏡の実物大模型や解説ポスターなどの展示を準備し、チーム全員がSPICAマーク入りのオレンジ色のTシャツを着て解説にあたりました。多くの方々が、望遠鏡モデルの前で記念撮影をする姿が見られ、皆さんがSPICAの望遠鏡の大きさを実感していました。

ミニ講演のコーナーでは、大学院生の福岡さんがSPICAの冷凍機の開発に関する講演を行いました。福岡さんは、冷凍機開発の実験をもとに修士論文をまとめるため、忙しい日々を過ごしているようです。また、赤外線観測による超巨大ブラックホールの研究についての講演をした大学院生の大西さんは、SPICAによって超巨大ブラックホールの研究が大きく進むとの期待を語っていました。

今年の特別公開でも数多くの皆様にSPICAへのご声援をいただきました。この声援を励みに、今後ともSPICAの開発を進めていきたいと思います。(磯部)


 
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SPICA collaboration会議 開催報告(2019年10月28-30日)

SPICA collaboration会議

10月28日、30日までフランス・パリ郊外のサクレーにて、SPICA collaboration会議が開催されました。初日は午前中に地上系(科学運用)の分科会、機関代表の会議がありましたが、午後から正式に会議が始まりました。冒頭の講演で、PIのPeter Roelfsema氏は、「Mission Selectionまであと1.5年(しかない)」ことを繰り返し強調し、関係者を鼓舞していました。初日は全体会で、各機関からの進捗報告がありました。

二日目からは分科会に分かれ、サイエンス分野ごとの議論が行われる一方、SAFARI、B-BOPのチーム会議がメインホールで行われました。他機関が参加するプロジェクトですので、同じ観測装置チームと行ってもこのような機会は密な議論をするのに貴重な機会らしく、所々で臨時の分科会が自主開催されていたようでした。三日目の午後からまとめの全体会があり、ここでも「あと1.5年」が強調されていました。

今回の会議は、B-BOPのPI機関であるCEA Saclayがホストでしたが、大変スムーズな運営でした。Saclayは、パリ郊外に開発中の広大な研究都市で、あちこちに建設のためのクレーンがあり、まだ公共交通機関も整備中とのこと。最寄り駅から会場まではバスで30-40分もかかるのですが、貸し切りバスを手配してくれたり、またコーヒーブレークのお菓子や昼食のケータリングもフランスらしいおしゃれなものだったことが印象的です。

次回は2020年3月、オランダ・ライデンでの開催が予定されています。(山村)


 
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SPICA サイエンス国際会議「SPICA 2019」開催報告(2019年5月20-23日)

SPICA2019 ISAS特別公開 2018 ISAS特別公開 2018

5月20日から23日の4日間、160名を超える参加者がギリシャ・クレタ島に集まり、SPICA のサイエンスに関する国際研究会「 SPICA 2019 "Exploring the Infrared Universe: The Promise of SPICA" 」が行われました。 多くの研究者が熱心に議論に加わり、SPICA への期待が大きいことが改めて認識された研究会となりました。 日本からも招待講演者を含めて20名以上の参加がありました。 また昼食後には5件のワーキング・グープの集まりがあり、それぞれ多くの方が参加され、今後のサイエンスの議論をまとめていくチーム作りが始まっています。(尾中)


SPICA Conference 2019 ホームページ
"Exploring the Infrared Universe: The Promise of SPICA"
http://www.spica2019.org/

 
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SPICA コラボレーション会議開催報告(2019年4月2-4日)

SPICA Collaboration Meeting 2019/04

SPICA 全体の観測装置開発・科学検討について包括的に扱う“SPICA コラボレーション会議”の第 1 回会合がオランダ・フローニンゲンの宇宙研究所(SRON)にて行われました。 この会議は、これまでヨーロッパの観測装置開発チームを中心に行われて来た“SAFARI コンソーシアム会議”を発展させ、今後半年毎に開催するものです。 会議には日欧の装置開発や科学検討に係るメンバー約 100 名が一同に会し、日本からも山田、金田、松原、土井の 4 名が、それぞれ機器開発状況や科学検討内容ついて発表を行いました。

会議規模の拡大に伴い、今回からは全体セッションに加え約半分の時間をパラレルセッションの時間に当て、個々の機器開発項目や科学内容について、実務担当者間で非常に密な議論を行う有意義な会合となりました。

全体会議では、機器開発状況の報告に加え多くの科学検討内容の報告が行われました。 その多くの発表で SPICA に搭載する3つの装置(SMI、SAFARI、B-BOP)をシームレスに利用することが検討されており、SPICA が装置間の垣根を超えた真の国際ミッションとして成熟しつつあることが強く印象に残りました。

今回の会議では、SAFARI のプロジェクトマネージャーであり、これまで Herschel 衛星搭載機器の開発等を長年リードして来た Kees Wafelbakker 氏の引退に伴い、Pieter Dieleman 氏への引き継ぎを行いました。 一方若手を中心に 10 名余の開発チームへの新たな参加も発表され、SPICA の開発が世代を引き継ぎつつ着実に進んでいることを印象付ける会議となりました。(土井)


 
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SMI 日台国際協力のワークショップ開催報告(2018年10月4日)

SMI ASIAA kickoff 2018/10

10月4日に台湾中央研究院 ASIAA で、SPICA 中間赤外線観測装置 SMI に関する日台国際協力のワークショップを開催しました

ワークショップホームページ: https://events.asiaa.sinica.edu.tw/workshop/20181004/

ASIAA は中間赤外線検出器の評価などの役割で SMI に参加することを検討しています。 今回は5年ぶりに台湾との協力を再開するということで、双方に顔ぶれも新しくなり、新鮮な雰囲気のなか、朝9時から夜18時過ぎまで長時間にわたって、 装置技術とサイエンスの活発な議論を交わしました。 参加者は30名以上、シニアな教授から大学院生まで集まり、赤外線アレイ検出器の開発から、サイエンスは銀河ダストのスペクトルサーベイ、 原始惑星系円盤ガスの速度観測、星形成フィラメントの磁場観測などを集中的に討議しました。 ラボツアーも実施され、電波天文と赤外線天文の実験設備の紹介を受けました。次回は1年後に、日本で同様のワークショップを持つ予定です。(金田)


 
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第1回 SPICA Science Study Team(SST)会議開催報告(2018年10月3日)

SPICA Science Study Team(SST)の最初の会議が10月3日にオランダ・Noordwijk の欧州宇宙技術研究センター ESTEC で開かれました。 今回は初めての会議ということで冒頭、各委員の紹介があり、それに引き続き、プロジェクト側から CDF の結果など SPICA の現状についての説明がありました。 その後、ESA側からSSTの役割と今後の活動についての説明があり、熱心な討議がありました。 SST の当面の目標は来年の Phase A 活動に向けて、SPICA の科学要求文書(Science Requirement Document)をとりまとめることです。 銀河進化、近傍銀河、原始惑星系円盤、太陽系天体、星間物質・星生成の5つのグループに分け、それぞれのグループに欧州側と日本側の委員が参加し、議論を進めることになりました。 最終的には、3年後の最終選抜に向けての申請書(いわゆるYellow Book)の作成が大きな作業となります。 第2回のSST会議は科学要求文書の完成を目指し、来年初めに日本で行うことが確認されました。

参考記事:SPICA Science Study Team(SST)の発足について


 
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SAFARIコンソーシアム会議報告(2018年9月24-26日)

SAFARI Consortium 2018/09

表記会議が、マドリッド郊外にあるスペイン国立航空宇宙技術研究所(INTA)のアストロバイオロジーセンター(Centro de Astrobiologia)で行われました。 この会議は半年毎の定例で、ヨーロッパ研究者で構成される「欧州 SPICA チーム」と日本チームの合同で、サイエンスや観測装置の検討を積み重ねているもので、今回も日本から3名(尾中、金田、松原)が参加しました。 今回は、M5ミッション候補に一次選抜されて以来初の会議であることに加えて気温が30度を超えたこともあってか、大変熱気にあふれた会議になりました。 中でも、新たに搭載することになった偏光観測装置(正式名 B-BOP)について、 PIの Marc Sauvage 氏が組織した詳細な発表があり、Phase A 作業に向けて着々と準備が進められていることがわかりました。 B-BOP(Magnetic field explorer with BOlometric Polarimeter)の名称は、磁場(Bで表記)を探査する偏光観測装置に由来し、本会議中に投票で決定されました。 また、サイエンスのセッションでも、B-BOP を用いる遠赤外撮像偏光観測に関する発表があり、相対的に遅れていたこの分野の検討が急速に進んでいることがわかりました。 また複数のスペイン研究者による新しいサイエンスの発表もありました。 次回(半年後)には、SAFARI と B-BOP が合同でコンソーシアム会議を開催する予定です。(尾中)


 
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SPICA Science Study Team 発足

天文学コミュニティーの意見を取り入れ SPICA の目標とする科学を議論し、科学要求をまとめる組織として、SPICA Science Study Team(SST)が ESA の元に発足しました。 日本からの意見も広く取り入れるよう、日本から約半数の5名が加わり、欧州側は SPICA M5 Proposal の PI として SST の議長を務める Peter R. Roelfsema 氏以下6名からなる11名のチームです。 最初の会合は10月3日にESTEC (オランダ)で行い、2回目は来年始めに日本で行うことが予定されています。(尾中)

SSTメンバーリスト http://www.ir.isas.jaxa.jp/SPICA/SPICA_HP/team.html#SST


 
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SPICA国内研究推進委員会の始動 (2018年9月)

SPICA計画は、現在計画実施を進めるSPICAプロジェクトメンバに限らず多くの研究者がこれを用いて研究を進める宇宙望遠鏡計画です。 これまでも様々な形での情報発信や学会・研究会を通じて多くの研究者との相互交流はありましたが、 ESA一次選抜も通過し概念検討が加速するこの段階において、今後、国内の研究者の方々のSPICAを用いた研究へのさらなる積極的な参加を促し、 また、研究コミュニティ全体の意向を、国際共同ミッションの遂行に反映させるために、宇宙研所長の諮問機関として、 「SPICA国内研究推進委員会」が設置されました。委員会委員には、光学赤外線天文連絡会、宇宙電波懇談会に推薦された方からの選出(計6名)をはじめ、 関連する研究分野(惑星科学、高エネルギー天文学)やデータ運用、技術・工学関係の方を含め、12名の方々に参加いただくこととなりました。

第1回の委員会では、委員長に愛媛大学の長尾透さん、副委員長に東京工業大学の野村英子さんが選出され、SPICA計画の進捗、 課題の報告に続いて研究推進委員会の今後の役割や活動についての活発な意見交換が行われました。今後、研究推進委員会は、 国際プロジェクトであるSPICAの国際的な科学推進活動と国内の研究コミュニティの連携を支え、進めてゆく役割も期待されます。(山田)

委員リスト http://www.ir.isas.jaxa.jp/SPICA/SPICA_HP/team.html#suishin


SPICA研究推進委員会発足
第1回委員会の様子(2018年9月4日)

 
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宇宙科学研究所特別公開2018(2018年7月27日)

ISAS特別公開 2018 ISAS特別公開 2018

2018年7月27日に、宇宙科学研究所の特別公開が開催されました。 今年は、台風12号の接近のため、開催が1日に短縮されましたが、SPICA の展示ブースには数多くの見学者の方々が訪れてくださいました。 SPICA が ESA Cosmic Vision の第5期Mクラスミッションの候補の一つに選抜されたという良いニュースが5月に発表されたこともあり、数多くの方から温かい応援をいただきました。

SPICA チームの展示では、恒例の SPICA の紹介ポスターと昨年度に新登場した三次元プリンタで作成した SPICA 立体模型に加えて、SPICA の望遠鏡の実物大模型が2年ぶりに復活しました。 望遠鏡実物大模型を通じて、見学者の皆さんには SPICA 衛星の望遠鏡の大きさを実感していただきました。 また、宇宙科学研究所の赤外線グループの松原教授が「次世代赤外天文衛星スピカ(SPICA)の挑戦」と題したミニ講演を行い、SPICA がどのような宇宙の姿を明らかにしようとしているのか、わかりやすく解説しました。 講演は盛況で、SPICA に興味を持った見学者の方々から多くの質問が上がりました。

この特別公開を通じて、SPICA チームの士気も一層高まりました。(磯部)


 
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ESAにてCDF(Concurrent Design Facility)技術検討(2018年6月15-7月11日)

M5 CDF 2018

SPICA の集中的技術検討(Concurrent Design Facility Study: CDF Study)が6月15日から7月11日の約一か月にわたってオランダの欧州宇宙技術研究センター ESTEC で行われました。 これは SPICA が ESA Cosmic Vision M5 一次選抜を通過したことを受けて、そのミッション成立性を、主に衛星コンフィグレーションその他の技術的観点から検討するものです。ESA の多数の専門技術者に加えて日欧の SPICA 提案者メンバーが参加して検討が進められました。 この期間中、日本側のメンバーが常時滞在してこれまでの日本の研究開発成果などについて情報提供するとともに、多数のスプリンター会議で議論を深めるなど、かけがえのない重要な貢献ができました。 この検討結果を踏まえて ESA と JAXA の役割分担とインターフェースを明確にした上で、日欧のフェーズA活動を有機的に進める計画です。(松原)


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SAFARIコンソーシアム会議報告(2018年5月30-6月1日)

SAFARI Consortium 2018/04
SAFARI Detector Meeting 2017/11SAFARI Detector Meeting 2017/11

2018年5月30日〜6月1日に、欧州 SPICA チームの全体会議となる SAFARI コンソーシアム会議がオランダ・フローニンゲンの宇宙研究所(SRON)にて行われました。 ESA による Cosmic Vision M5 一次選抜通過を受けて開催された今会議には、87名と多数の参加者があり、プロジェクトの今後の進め方・SAFARI の装置開発や科学検討について、活発な意見交換が行われました。 日本からは国内の SPICA プロジェクトの状況を山田・松原・磯部(ISAS)から、また科学検討状況やSMIの開発状況を尾中(東大)・金田(名大)から、それぞれ報告しました。 それぞれの発表に対して、会場に参加したメンバーのみならず、ネット中継越しに参加した多くのメンバーからも活発に質疑が行われました。

今回からは ESA の SPICA 担当者も会議に直接参加し、6月から早速始まる SPICA ミッションの ESA/JAXA/SPICA プロジェクト三者による詳細検討について、 本会議、及び最終日に行われた少人数での準備会議の両者において、具体的な打ち合わせを行いました。

SPICA の行う科学観測について、検討を深めると共により多くの方々の参加を得るために、SPICA プロジェクトでは2019年5月にギリシャで大規模な科学会議の開催を予定しています。 その準備会合も本会議とは別に行われました。科学会議の詳細については近々皆さんにもアナウンス出来る予定です。

次回コンソーシアム会議は2018年10月の開催を予定しています。 SAFARI コンソーシアムはこれまで実質的に欧州 SPICA プロジェクトの全体を包含する組織でしたが、 SPICAプロジェクトが実現へ向けて大きな一歩を踏み出したことで、プロジェクトチームの構成も、「プロジェクト全体」と「個々の観測装置」をより具体的に考えるべく、 今後変わってくることが考えられます。 次回のコンソーシアム会議はこの関係を整理し、再編成する会議となる予定です。

今回の会議は ESA による一次選抜採択を大いに祝すと共に、三年後に予定される最終選抜へ向けてプロジェクトの一層の活性化を図るべく、皆で決意を新たにする会議となりました。(土井)


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SPICA観測系アドバイザリーボード 第3回SMI分科会開催報告(2018年4月2日)

3rd SMI Review 2018/04

2018年4月2日に、SPICA観測系アドバイザリーボード第3回SMI分科会が開催されました。 今回は、観測性能に関係する項目を中心に、システム要求からSMIの仕様書までのフローおよび仕様と基本設計の整合性の確認を中心に行いました。 ボード委員からは、観測感度向上のための検討をさらに進めるようにとの意見が出ました。 頂いた提言をもとに、SMIチームは現設計のさらなる最適化や光学要素の再評価などを進めていく予定です。(山村)


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東京大学との連携協力について

「国立大学法人東京大学と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所のアタカマ天文台及び次世代赤外線天文衛星の連携協力に係る覚書」の締結

Agreement with TAO 2017/12

SPICA と同じ赤外線観測分野において、アタカマ天文台(以下「TAO」)計画を進めている東京大学と SPICA を推進する宇宙科学研究所との間で、平成29年12月末、連携協力に関わる覚え書きが交わされました。 SPICA と TAO は、赤外線観測において、飛翔体望遠鏡と地上望遠鏡という観測手段の違いがありますが、感度、空間解像度、観測機会・頻度などにおいて、相互に補完的です。 特に、20〜30 ミクロン帯での観測を世界に先駆けて実施するTAO計画での連携協力することは、SPICA の搭載機器の開発などにも資するところが大きいと期待されます。 SPICA 及び TAO 計画の実施において、「観測装置の開発・運用」では、東京大学が主導する TAO 用中間赤外線観測装置の試験観測・立ち上げ・運用での協力、ISAS が主導する SPICA の検出器等の要素技術の開発や試験での協力、 「科学観測の実施」では、共同で目指す科学テーマについての、TAO 望遠鏡による観測や SPICA 科学観測準備などでの協力、「人材育成」では、TAO 望遠鏡を用いた観測への若手研究者や学生の参加の枠組みを整備して、 その経験を SPICA の開発に生かせる機会を確保し、また、将来の赤外線観測分野を担う人材の育成をめざす協力、そして、「将来計画の検討」では、SPICA 運用開始後の将来に科学的成果の最大化をはかるための検討での協力などをすすめてゆく内容が盛り込まれています。(山田)

TAO ホームページ http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/TAO/


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リエージュ宇宙センター(CSL)極低温試験施設訪問(2018年1月22日)

CSL visit 2018/1 CSL visit 2018/1
右の写真は試験施設内部の模型です。施設内部は、他のミッションが試験中のため写真撮影禁止でした。

1月22日に、SPICA チームのエンジニアが SPICA ペイロードモジュール(PLM)の極低温試験実施施設の候補である、ベルギーのリエージュ宇宙センター(Centre Spatiale de Liege; CSL)を訪問しました。 CSL は リエージュ大学(University of Liege)の天文学/宇宙物理学の研究施設で、宇宙機や観測機器の環境試験を実施してきた歴史があり、欧州宇宙機関 ESA を中心に数多くの宇宙プログラムを支援しています。 過去には Harschel や Planck などの宇宙望遠鏡や、JWST の観測装置などの光学試験や極低温試験が行われました。 技術職員が80人程度の小規模な組織ですが、光学/極低温試験に特化した技術集団として評価を受けています。

SPICA は2009年に打ち上げられた ESAの Planck 宇宙望遠鏡の開発で培われてきた技術や設備を活用できる宇宙機で、経験値・コストの面から、SPICA PLM の極低温試験を Planck の極低温試験が実施された CSL の試験設備で行うことが一つの案として検討されています。

本訪問では、試験設備の現地調査や現地技術者との打ち合わせを行い、CSL 施設での試験の有効性と今後の方針について検討をしました。 CSL 側からは環境試験プログラム長をはじめ、光学技術者、極低温技術者など5人が参加し、主に下記の項目について議論しました。

  • 現在の SPCA PLM の設計で試験可能なチャンバ/試験設備と設備改修
  • Planck で使用したサーマルテント、冶具などの使用可否
  • 宇宙機の輸送方法,搬入方法、作業場所
  • 試験スケジュールの案
CSL の技術者は SPICA の極低温試験に非常に興味をもっている印象をうけました。 「This is challenging... but we like it!」

今後、より具体的なスケジュールとコスト算出に向けて、技術的な実現可能性の検討が行われる予定です。 限られたリソースの中で最大限の結果を導くべく、今後も検討を続けていく所存です。(西城)


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SAFARI検出器開発レビュー会議報告(2017年11月29-30日)

SAFARI Detector Meeting 2017/11SAFARI Detector Meeting 2017/11

SPICAプロジェクトは現在 ESA cosmic vision 候補プロジェクト採択の吉報を待っているところですが、「採択後」に備えた準備は既に始まっています。 SAFARIの特にチャレンジングな技術要素である、超高感度の超電導検出器について、現在までの開発状況をレビューし、今後の開発計画を立案する会議が、2017年11月29日〜30日にイギリス・ケンブリッジ大学にて行われました。 会議では検出器開発に直接係るメンバーとそれをレビューする経験豊富なメンバーを含め、およそ25名が2日間にわたり綿密な議論を行いました。

JAXAやESAは宇宙ミッションの採択に際し観測装置の技術開発レベルについて厳密な規定を持っています。 プロジェクトの最終採択の際には、個々の装置コンポーネントが厳しい宇宙環境できちんと性能を発揮出来ることを具体的に示すことが求められます。 最終採択までのこれからおよそ3年の間に、この技術レベルを確実に達成すべく、綿密な開発プランの立案とその着実な実行が求められます。

会議では、世界最高感度を達成している検出素子の多素子アレー化、周波数多重読み出し回路の開発、検出素子に光を導くフィードホーンアレーの開発、 フーリエ分光器と組み合わせた際の検出器信号の解析シミュレーションなど、多岐にわたる開発状況について、見過ごされている問題点が無いかをひとつひとつレビューし、これまでの開発の方向性に間違いが無いこと、そして今後も着実に開発を進める事を確認しました。 またこれらの技術要素を組み合わせる際に必要となる試験装置や周辺技術の準備状況など、詳細な項目の洗い出しを行い、3年間の開発計画の大枠を策定しました。開発チームは詳細な開発プランを今後1,2ヶ月の内にまとめると共に、この間も個々の技術開発を着実に進めて行きます。(土井)


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SAFARIチームが来所(2017年11月24日)

11月24日に、SPICAの遠赤外線観測装置SAFARIチームのメンバーが来所し、SPICA日本チームと打ち合わせを行いました。 来所したのは、SPICA代表研究者(PI)の Peter Roelfsema氏(SRON)、SAFARI偏光装置マネージャーの Louis Rodriguez氏(CEA)、CEA天文部門長の Anne Decourchelle氏(CEA)の3名。 ホリデーシーズンにちなみ、サンタクロースでデコレーションされたSPICA文字のチョコレートをおみやげにいただきました。

SAFARI visit
SAFARI visit

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SPICA国内研究会2017 開催報告(2017年11月22日)

SPICA Workshop 2017 SPICA Workshop 2017

11月22日に、SPICAの国内研究会が宇宙研で開かれました。1日だけの研究会で、終了時には小雨が降り出しましたが、約40名の参加者があり、熱心にSPICAによるサイエンスについての議論を行いました。 特に今回は新たに搭載を計画している遠赤外線の偏光装置による観測に前半の時間を割きましたが、いろいろな分野での新しいサイエンスの可能性が議論され、偏光装置に対する高い期待が示されました。 また後半は、最新の銀河進化の研究から期待されるSPICAの役割が多く議論されました。若い研究者の発表が多数あり、新たにSPICAのサイエンスに参加していただいた方も多く、非常に有意義な研究会となりました。 今後も引き続きこのような研究会を継続して行なっていく予定です。(尾中)

研究会ホームページ http://www.ir.isas.jaxa.jp/SPICA/SPICA_HP/WS_171122/


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SAFARIコンソーシアム会議報告(2017年9月20-22日)

SAFARI_Consortium_201709
SAFARI_Consortium_201709 SAFARI_Consortium_201709
SAFARI_Consortium_201709

2017年9月20日〜22日に、欧州 SPICA チームの全体会議となる SAFARI コンソーシアム会議がイタリア・ローマ郊外の国立宇宙物理研究所キャンパスにて行われました。 参加者は全体で60余名、日本からは5名が参加しました。 半年毎に行われているコンソーシアム会議ですが、今回は特に、目前に迫った ESA Cosmic Vision M5 の一次選抜を控え、採択への期待がいやが上にも高まる中での開催となりました。

本会議では SPICA プロジェクトの無事の採択を信じ、採択後の計画推進に確実なスタードダッシュを切れる様、機器開発の現状、及び来年以降の具体的な活動計画について、詳しい報告と議論が行われました。 SAFARI の高い感度を達成するための TES 検出素子については、SRON、Cardiff大学、JPLの各研究者の努力により既に単体では世界最高の感度を実現していますが、SAFARI に実際に搭載する、複数素子を持つアレー検出器の試作経過が報告されました。 検出器信号読み出し回路についても、必要な性能を達成するための道筋が確立しつつあります。 これらの経過を受け、検出器に関わる要素技術について、開発の初期成果をまとめ、内容を精査するレビュー会議を近日中に開催することが提案されました。 また今年から本格的に SAFARI コンソーシアムに参加した台湾の研究者からは、検出感度較正光源の開発報告が初めてあり、基本的な必要スペックの検討と共に、一部は既に具体的な試作に入るなど、活発な開発活動の現状が報告されました。 日本の SPICA チームからは、SPICA 計画全体についての進展状況を尾中(東大)から、衛星システム及び観測装置搭載部の設計検討状況を和田(宇宙研)から、SMI の開発状況を金田(名大)から、それぞれ本会議にて報告しました。

本会議に加えて、個別のテーマに沿った小ミーティングも活発に行われました。 2017年3月のコンソーシアム会議に引き続き、望遠鏡焦点面の機器配置についての詳細検討会議を行いました。基本的な機器配置について日欧のメンバー間で合意に達し、日本の主導の下に3月から進めて来た議論の当初の目的を達成しました。 その他 SAFARI コンソーシアム内の各国代表による運営会議や、日欧による SPICA プロジェクト運営のための協議会合を持ち、M5 一次選抜へ向けての最後の詰めを抜かりなく行うための詳しい議論を行いました。 ESA に対し各候補プロジェクトが各々の科学的意義を直接説明する「サイエンスインタビュー」の11月初頭の開催がアナウンスされており、その対応が直近の重要な活動項目です。

今回の会場は2009年9月に SAFARI コンソーシアム会議を開催した場所でもあります。 会議バンケットも前回と同じレストランで行われ、その場ではその時期に欧州プロジェクトチームを率い、2015年に惜しまれつつ世を去った Bruce Swinyard 教授(英国RAL研究所)の思い出話に花を咲かせる場面も見られました。 次回コンソーシアム会議は2018年3月にオランダSRONにて開催予定です。 ESA M5 の一次選抜を無事通過し、プロジェクトの新たなスタートを祝うことを全員で期して、会議を終えました。(土井)


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台湾の中央研究院(Academia Sinica)訪問(2017年9月15日)

ASIAA Visit 201709
中央研究院天文及天体物理研究所へ訪問
(右から、Wang副所長、Chu所長、常田所長、山田)
ASIAA Visit 201709
中央研究院本部へ訪問
(右から、山田、Chu所長、Chou副院長、常田所長、Wang副所長)

9月15日、常田宇宙研所長が台湾の中央研究院(Academia Sinica)天文及天体物理研究所(ASIAA)および中央研究院本部を訪問しました。

ASIAAとの会合は、常田宇宙研所長、You-Hua Chu ASIAA所長にShiang-Yu Wang ASIAA副所長、山田宇宙研宇宙物理学研究系主幹が同席して行われ、 SPICA計画について、 今後、ASIAAが日本が進めるSPICAの中間赤外線観測装置SMIの概念検討・開発研究に参加し、 その開発について協力していくことについての合意がなされました。

また中央研究院本部では Mei-Yin Chou 副院長と懇談し、JAXAが主導しASIAA・台湾が観測装置LEP-eの開発を担ったERG衛星の打ち上げ成功について JAXAからの謝意を表すると共に、SPICA計画についての概要とJAXA-ASIAA間でその開発協力に合意したことを報告し、 今後の協力について意見交換を行いました。 (山田)


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SPICA観測系アドバイザリーボードの活動(2017年8月28日)

1st SMI subcommittee meeting 2017/081st SMI subcommittee meeting 2017/08

SPICA計画を進める上で、これまで様々な審査が行われてきました。しかし、衛星計画全体の審査は機会も限られ、天文観測を行うための望遠鏡や観測装置など技術的詳細まではカバーできません。 観測装置の開発に寄り添って建設的な助言を行うことを目的に、2016年夏に「SPICA観測系アドバイザリーボード」が作られました。 委員長は国立天文台の井口教授、委員は同じく天文台の高見教授、臼田教授、東京大学天文学教育研究センターの宮田教授、本原准教授の合わせて5名の方々です。 2016年10月に最初の会議を開催し、SPICA計画と望遠鏡や観測装置の概要について議論を行いました。

次の段階として、日本側が担当する中間赤外線観測装置SMIについてより詳細な議論を行う分科会の第1回が、2017年8月22日に行われました。 今回は、SPICAの科学目標を実現するために、どのような観測が行われ、そのためにSMIにどのような性能が要求されるのか、という根本の部分を理解することを目的としました。 SPICA/SMIチームから金田(名大)、和田(宇宙研)を中心に説明を行い、活発な議論のもと、SMIによるサイエンスと基本仕様に関する理解を深めました。 今後、より詳細な設計に向けて議論を深めていくことになっています。 (山村)


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宇宙科学研究所 特別公開(2017年8月25-26日)

ISAS Open Day 2017 ISAS Open Day 2017

8月25-26日の2日間、宇宙科学研究所特別公開が行われました。SPICAチームは、恒例のSPICA紹介ポスターとSPICA立体模型を展示しました。 宇宙研の先端技術工作グループが導入したばかりの新しい3Dプリンタを使用し、これまでよりさらに詳細な模型を新たに製作し、展示しました。 新しい模型では、トラスやバス部、観測装置などの配置が分かりやすくなっており、見学者からも大変好評でした。 また、ミニ講演では「SPICAで探る宇宙の歴史」と題して、研究員の磯部氏が講演をしました。ミニ講演も大変盛況で、立ち見がでるほどでした。 多くの方にSPICAを知っていただき、SPICAの目指す科学や特徴的な技術に興味を持っていただく機会となりました。 中には、毎年来て下さる方々もいて、SPICAチームに熱烈な応援をいただきました。(長勢)

ISAS Open Day 2017

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焦点面観測装置タイガーチーム対面会議開催報告(2017年5月31日-6月1日)

FPI Tiger Meeting 2017/05

タイガーチームとは、何か特定の問題について緊急の解決が必要になった際、専門家及び責任者を集めて組織されるチームのことです。 昨年10月の ESA Cosmic Vision M5 公募への提案に向けて日欧で観測装置検討の準備を進めた際に、当初の望遠鏡焦点面における観測機器配置案では、特にSAFARI分光器システム(SPEC)と偏光観測システム(POL)の搭載が困難であることがわかり、今年3月に「焦点面観測装置(FPI)タイガーチーム」が発足しました。 チームメンバーは、FPI全体システム担当として川田・クォン・松原(以上宇宙研)及び土井(東大)、SMIチームから金田(PI、名大)及び左近(東大)、SAFARI/SPECから3名、SAFARI/POLから2名の計11名で、議長は松原が務めています(PIのRoelfsemaはオブザーバー)。 これまで2度の遠隔会議を経て、5月31日と6月1日に対面会議を開催しました。

会場となったのはフランス・サクレー(パリ近郊)にあるCEAサクレー研究所天体物理部門(SAp)で、POLの取りまとめ役であるRodriguezを始め関係するCEAの技術者が多数所属する研究所です。 タイガーチームメンバー以外にCEA所属のSPICA開発チームメンバーの参加も多数得て、20名を超える会合となりました。 対面会議はまず、SAFARI/SPECの質量・体積等必要リソースについてかなり突っ込んだ質疑に始まり、SAFARI/POLの視野配置やリレー光学系の提案、SMIの光学系・機器配置及びモジュール全体の移動可能性の説明等がありました。 次に焦点面ガイドカメラ(FAS)の搭載位置と指向安定要求との関係について詳しく議論し、これらをもとに、SAFARI/POLの視野位置、FAS搭載位置の異なる3ケースを、今後並行して検討することで合意に達しました。 今秋のSAFARIコンソーシアム会議までには、各チームの検討結果を集約し、配置案を絞る予定です。

SApの所在地「Orme des merisiers(野桜の中のニレの木(エルム))」になぞらえ、開催地世話人も務めたRodriguezが「“エルム街の悪夢”(アメリカのホラー映画)にならないかと心配」と会議前に冗談メールを投げていましたが、実際には、皆が情熱を持って問題解決にあたったおかげで(白熱した場面もありましたが)、解決の見通しがたった有意義な対面会議であったと、皆が納得して帰国の途に就きました。(松原) 


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SPICA/SMI 国内技術会議・説明会 開催報告(2017年3月31日)

SMI_meeting_20170331

本会議は、SPICA観測装置に関する国内研究者向けの技術進捗確認・説明会として、昨年度から実施しています。 今回はJAXA宇宙科学研究所で開催しましたが、内容を「技術開発」に特化したものであるにも関わらず、総勢47名の方が参加して、盛況な会議となりました。 今秋から開始する見込みのSPICA観測装置の本格的な技術検討に向けて、国内の開発体制をどのように強化するのか、また現状の装置仕様で問題がないかなどを議論しました。 参加者からは具体的なコメントや改善策が提示され、今後の課題などが明らかになりました。次回は半年後に開催する予定です。 SPICAの本格始動に向けて、新たな機関・グループからの御参加をお待ちしております。(金田)

研究会ホームページ http://www.ir.isas.jaxa.jp/SPICA/SPICA_HP/smi20170331.html


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SAFARIコンソーシアム会議開催報告(2017年3月1-2日)

SAFARI_Consortium_201703
コンソーシアム会議本会議の様子
プラネタリウム上映の大きな天井スクリーンにスライドを投影
SAFARI_Consortium_201703
焦点面観測装置の機器配置などの技術会議の様子

2017年3月1日〜2日に、欧州 SPICA チームの SAFARI コンソーシアム会議がドイツ・ハイデルベルクのマックスプランク天体物理研究所で行われました。 昨年10月の ESA Cosmic Vision M5 公募への提案応募以降、はじめてのコンソーシアム会議であり、全体的に提案チームの計画推進への機運が高まった雰囲気の中で、SAFARI および SPICA の現状と今後の計画について、活発な議論が交わされました。 出席者は、欧州各国から約60名で、日本からはProject Scientist尾中(東京大学)をはじめ、6名が参加しました。 SAFARI コンソーシアム会議は、本来、観測装置 SAFARI を実現するためのコンソーシアムの会合ではありますが、本会議の位置づけとして、実質的には、欧州の SPICA 提案チームによる全体会議(ただし、公募中のため、特定計画に参加することが認められていないESA 関係者は除く)といえるものです。 SAFARI コンソーシアム代表の Peter Roelfsema 博士(SRON) から、SPICA 計画全体についての概要と、M5提案の提出までの活動の報告があり、そこでは、M5提案の作成に当たって日本の SPICA チームの大きな貢献があったことについても言及されました。 M5 公募審査においては、第一次選抜が2017年半ばに予定されているが、コンソーシアム会議の時点では、科学的価値の評価審査に至る前の段階でコストや成立性の観点での評価が進んでいる状況です。

日本のSPICA チームからは、SPICAのJAXA における現状報告(宇宙研・山田)、冷却系を含むペイロードモジュールについての検討の進捗報告(宇宙研・小川)、観測装置SMI についての進捗報告(名古屋大学・金田)が行われ、また、SAFARI チームからはSAFARI分光器システムと偏光観測機能のための SAFARI/POL についての概念検討結果の進捗が報告されました。 また、SPICA が目指す科学成果についても、銀河進化、銀河星間物質、原始惑星系円盤などの各テーマについて M5 提案からさらに詳しい科学的内容を報告する論文の準備状況が報告されるとともに、今後の方針についての意見交換が行われました。 来年にむけては、SPICA を中心テーマとする国際科学研究会の開催を企画する方針も確認されました。

本会議に加えて、日欧での SPIACA のプログラム運営のための協議、SPICAの望遠鏡焦点面における観測装置の機器配置の検討に特化した技術会議、SAFARIコンソーシアムの各国代表者(日本代表は東京大学・土井)による Head of Nation 会議も行われ、それぞれ率直な意見交換と SPICA の今後の推進に向けた活発な議論があり、全体として、大変有意義な会議となりました。 焦点面装置の議論では、松原(宇宙研)、石原(名古屋大学)らがこれまでの検討状況の詳細を提示して議論を主導し、SAFARIチームとも忌憚ないやりとりを持って、今後、SPICA チームとしてさらに検討を進めることが合意されました。

会場のマックスプランク天体物理研究所は、ハイデルベルクの古城をも見下ろす小高い山の山頂付近にあり、市街地との交通には、趣のあるケーブルカーを使う参加者もいました。 今回の会議の会場は、プラネタリウムの上映も行われるオーディトリウムで、大きな天井の曲面スクリーンに移されるなど、普段とはやや違った雰囲気でしたが、欧州、そして日本の SPICA チームメンバーが、今後の計画推進への意欲を確認する上でもたいへん有用な機会となりました。(山田)


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欧州宇宙機関 ESAに、日欧共同で SPICA を正式提案しました

欧州宇宙機関(ESA)が推進する宇宙科学プログラム(Cosmic Vision)中型ミッション(Mクラス)5号機の公募に対し、SPICAチームは国際共同で計画提案書を提出しました。オランダの SRON を中心に、日本を含む15か国以上の研究者が参加して提案書を作成しました。

「Unveiling the obscured Universe」と題された提案書には、SPICAプロジェクトの概要、ミッションの科学目的、目的達成に必要な観測データの見積もり、そこから要求される衛星と観測装置の仕様、現状の技術進捗度と今後必要な技術開発項目のリストアップ、実施体制、開発スケジュール、コストなどについて記載されました。また主要な参加国の宇宙機関や資金提供機関との連携が取れているかどうかも重要な審査項目となります。

今後2017年6月までに、応募された提案書の審査が行われて3件以内に絞られます(第一次選抜)。これらに対して詳細な審査が行われて、2019年11月に1件の採択が決まります。この欧州での審査期間中、SPICAチームは、日本側担当分を中心に衛星や観測装置の概念設計を詳細化するとともに科学観測項目の検討を引き続き進めます。

本提案書を提出するにあり、大変多くの方々に参加や支援をして頂きました。SPICA サポーターを表明して下さった方はもとより、皆様のご支援に深く感謝致します。

M5 Proposal
プロポーザル表紙(内容は非公開)

※「M5」とは「中型ミッションの5号機」という意味です。M5公募の詳細については以下のURLをご覧ください(英語のみ)。
http://www.cosmos.esa.int/web/call-for-m5-missions


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宇宙科学研究所 特別公開(2016年7月29-30日)

ISAS Open House 2016ISAS Open House 2016

7月29、30日の2日間、毎夏恒例の宇宙科学研究所特別公開が行われました。SPICAチームは、恒例のSPICA紹介ポスターとともに、SPICAの直径2.5メートル主鏡の実物大模型を展示しました。 さらに直径60センチメートルの実物大副鏡模型を手に持って、実際の副鏡位置(主鏡から約2メートル)に立って望遠鏡の大きさを3次元で体感できるようにしました。手作り模型の鏡面は平面でしたし(実際の鏡は曲面です)、金色の折り紙を貼っただけの(鏡なのに姿が映らない)簡易なものでしたので、大人の見学者からは多くのツッコミがありましたが、見た目のインパクトのせいか子供たちには好評でした。 3Dプリンタで作成したSPICA立体模型(こちらは実物の1/30サイズ)も合わせて展示したため、よりSPICAをイメージしやすかったようです。特に大きい望遠鏡がそのまままるごとJAXAのロケットに積まれるという説明を聴いて、ロケットの大きさにまで想像を膨らませて興味を持った見学者が多くいました。実はSPICAチームのメンバーにとっても、主鏡の大きさを実感する良い機会になりました。


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SPICA 国際サイエンスボード 第2回会議 開催報告(2016年7月15日)

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7月15日、パリ天文台を中心とし、宇宙科学研究所および各地との電子会議接続を用いて、 JAXA SPICA 国際ボードの第2回会議が開催されました。SPICA 国際ボードは、JAXA 宇宙科学研究所が SPICA 計画を推進するに当たり、当該の分野において国際的に活躍されている指導的な研究者を招へいして SPICA チームが目指す科学目的を吟味し、SPICA チームの活動に反映して計画をさらに発展させてゆくための JAXA に対する提言をいただくためのもので、第1回会議は、2016年5月9,10日にJAXA東京事務所で開催しています。

欧州・日本を中心とする国際計画であるSPICA 計画は、JAXA 宇宙科学研究所においては、科学目的を中心に計画の妥当性を審査する「ミッション定義審査」に合格し、現在フェーズ A1 と呼ばれる概念検討の段階に入っていますが、欧州では、「コズミック・ビジョン」計画・中型第5号機として公募される計画に応募し、さらに厳しい競争を勝ち抜いて、2020年代後半の計画候補に選ばれなければなりません。 このため、欧州・日本の SPICA チームは一致協力して、SPICA 計画提案を練り上げているところです。 第2回国際ボード会議では、この計画提案をもとに、SPICA 計画の目指す科学的内容が、その重要性を十分に表しているか、説得力のある計画になっているか、という観点からも厳しく評価をすすめることが目的でした。今回も、David Elbaz 博士(写真左奥)はじめ11名からなる国際ボードの委員は、提案書ドラフトに基づく資料を丁寧に読み解き、厳しいながらも建設的な議論をしていただきました。 また、会議終了後の7月20日には、今回の会議を踏まえての JAXA への提言となるレポートが提出され、そこには、SPICA チームに期待する提言として、提案書ドラフト全般についての様々な改善点に加え、「もっとも基本となる科学目的」と各論とのつながりをより明確にすべきこと、目的を達するための「コアとなる観測プログラム」をより明確にすべきこと、SPICAのユニークな能力を示すことに加え科学的アウトカムをより明確に記述すること、など、本質的なコメントをいただくことができました。

今回も、国際科学ボードのメンバーの方々には、SPICA 計画に対して真剣に考察と議論をいただいたことに、宇宙科学研究所も、SPICA チームも非常に感謝しています。いよいよ、欧州「コズミック・ビジョン」提案応募に向けてのラストスパートとなり、国際ボードの得難い提言を真剣に考慮しつつ、SPICA チームも懸命に努力を続けています。最後になりましたが、会場をお貸しいただいたパリ天文台に感謝いたします。(山田)


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SPICAデルタ計画審査が行われ、フェーズA1活動が認められました

SPICAデルタ計画審査が2016年7月8日に宇宙科学研究所と国内各所を結んで行われ、審査結果は合格と判定されました。これにより、フェーズA1活動(システム要求審査までのプロジェクト推進活動)が所内で認められたことになります。

SPICAのフェーズA1活動の開始の妥当性の審査は、当初昨年12月に計画審査として実施されました。しかしその後、欧州との調整を進めた結果、日欧役割分担の一部見直しや、欧州宇宙機関(ESA)のコズミック・ビジョン中型クラス(M5)公募スケジュールが当初予想と異なっていたため、SPICA計画の部分的な修正変更を行いました。今回の審査では、これらの変更点に焦点を置き、新しいフェーズA1活動計画の妥当性の確認などが行われました。

今後、SPICAチームは、今秋に控えたESAコズミック・ビジョンM5プロポーザルの応募準備を加速するとともに、宇宙科学研究所でのシステム要求審査や、JAXAのプロジェクト準備審査に向けて準備作業を進めることになります。


※ JAXAの衛星プロジェクトは既定のステップに則って進められます。プロジェクト準備のための期間であるフェーズAは、SPICAの場合、日欧共同でシステム要求を設定し国際分担を確定するまでのフェーズA1と、日欧共同でシステム仕様を確定し重要技術要素の開発を進めるフェーズA2に区別されています。

SPICA Phase


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SPICA 国際ボード会議 (JAXA’s SPICA International Science Advisory Board) 開催報告

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5月9日、10日、JAXA 東京事務所(御茶ノ水)において、 JAXA SPICA 国際ボードの第1回会議が開催されました。これは、JAXA 宇宙科学研究所が SPICA 計画を推進するに当たり、当該の分野において国際的に活躍されている指導的な研究者を招へいして SPICA チームが目指す科学目的を吟味し、SPICA チームの活動に反映して計画をさらに発展させてゆくための JAXA に対する提言をいただくためのものです。この国際科学ボードには、特に、日本と欧州の SPICA チームが準備を進めている、欧州 ESA Cosmic Vision M5 (宇宙科学ミッションの M-Class)の公募提案について、SPICA の目指す科学目的、期待される科学成果についての内容を吟味し、これをより明確かつ強力なものとするための JAXA に対する助言が求められます。

11名からなる国際ボードの委員を務めていただくのは、Dr. Yuri Aikawa (Tsukuba University, Japan)、Dr. Philippe Andre (CEA, Saclay, France), Dr. Michael Barlow (University College London, UK), Dr. Andrew Blain (University of Leicester, UK), Dr. Ewine van Dishoeck (Leiden Observatory, University of Leiden, Netherland), Dr. David Elbaz (CEA, Saclay, France), Dr. Reinhard Genzel (Max Planck Institute for Extraterrestrial Physics, University of California Berkeley, Germany), Dr. George Helou (Infrared Processing and Analysis Center, California Institute of Technology, USA), Dr. Roberto Maiolino (Cavendish Laboratory, Kavli Institute for Cosmology, University of Cambridge, UK), Dr. Margaret Meixner (Space Telescope Science Institute, USA), Dr. Tsutomu Takeuchi (Nagoya University, Japan) という方々で、議長は、フランスのDavid Elbaz 博士(写真右)です。日米欧の第一線の研究者の方々に SPICA 計画についてより理解を深めていただき、真剣な考察をいただくための得がたい機会でもあります。

会議では、日本の SPICA チームから、SPICA とその観測装置 SMI および SAFARI についての紹介に続いて、SPICA 計画の核となる科学目的についてのプレゼンテーションが行われ、大変活発な議論が行われました。今回の会議では、大目標である「銀河進化を通しての重元素とダストによる宇宙の豊穣化」および「生命居住可能な世界に至る惑星系形成」を解明するための5つの中心的な研究テーマ、すなわち、銀河の形成進化と宇宙の星形成史の解明、巨大ブラックホールの形成と共進化、近傍銀河と星間物質の物理、原始惑星系円盤と惑星形成、および、デブリ円盤と惑星系の進化について、SPICA が何をどこまで解明するのか、SPICA による観測ではじめて得られる重要な科学成果への期待などを盛り込んだ発表が行われ、国際ボード委員からは、多くの建設的な質疑、また、計画をより良くするための批判的な質疑が行われました。国際科学ボードからは、これらの議論に基づいて、JAXA 宇宙科学研究所への提言が行われます。ここには、SPICA チームへの「宿題」が盛り込まれますが、これを踏まえて、早くも第2回の会議を7月上旬に行うことが決定されました。SPICA チームとしては、今回、宇宙科学研究所にいただいた提言に基づくチームへの指針をいただき、まず真摯に受け止めるとともに、欧州の SPICA チーム研究者とも十分に議論を重ねつつ計画提案を練り上げる努力をさらに続けてゆくことが必須です。

国際科学ボードのメンバーとしてお願いしている研究者のかたがたは、皆、それぞれ大変にお忙しい方ばかりですが、来日して JAXA 東京事務所の開場で参加いただいた方、また、時差により深夜となるにもかかわらず、テレビ会議を通して熱心に議論に参加いただいた方の皆さんが、SPICA 計画に対して真剣に考察と議論をいただいたことに、宇宙科学研究所も、SPICA チームも非常に感謝しています。これを一片も無駄にすることなく、SPICA 計画をさらに強力な提案として練り上げることが求められます。(山田)

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SAFARIコンソーシアム会議 開催報告(2016年4月13-14日)

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2016年4月13、14日オランダ・フローニンゲンのSRON(オランダ宇宙研究所)においてSAFARIコンソーシアム会議が、参加者が50人を超える盛況の中、行われました。SAFARIはSPICAの遠赤外線観測装置であり、欧州を中心したコンソーシアムで計画が進められています。

前回去年2015年の10月に行われてから半年ぶりとなる本会議では、欧州宇宙機構(ESA) Cosmic Vision のMiddle クラス "M5" におけるプロポーザルの準備状況の確認、および日本側の状況の共有、そして SAFARI の最新装置仕様の説明が主な議題となりました。

日本側からはSPICAプロジェクトサイエンティストである尾中東大教授、そして本年東北大より宇宙科学研究所へ赴任された山田教授より、SPICAプロジェクトが宇宙科学研究所で行われたミッション定義審査を無事に合格し、プリプロジェクトへと移行すること、宇宙科学研究所としてこれを推進する強い意志を示していること、また今後の日本側のプロジェクトスケジュール等について報告が行われました。プロジェクト実現へと大きく進んだ事に関して、欧州の研究者たちから強く支持を受けました。

また、SPICA日本開発観測装置である中間赤外線観測装置 SMI に関して宇宙研助教である和田氏より、装置仕様の詳細、および開発状況、そしてSMI を用いた特色的でユニークな観測計画の報告がなされました。SMI を用いた観測計画に関する発表が、引き続き欧州の多くの研究者達から行われ、日本開発観測装置に対する興味と要望が日本の研究者だけでなく、世界中の研究者にとっても同様に非常に高い事が伺われる結果となっています。

一方、欧州リードの観測装置である遠赤外線観測装置 SAFARIに関して、装置概要、開発状況、今後のスケジュールについて、SAFARIチームより発表がされました。 グレーティング分光器とフーリエ分光器を組み合わせるというユニークな観測装置構成により、かすかな天体のスペクトルを超高感度で観測するモードと、感度 をあまり落とすことなく詳細なスペクトルの観測を行うモードを両立させることに成功し、多くの天文学者にとって非常に魅力的な観測装置となっていることが 示されました。

M5 プロポーザル提出に際して、現在まで隔週での電話会議などを用い、日欧含めた国際チームでSPICAの科学目的に関して議論を行ってきています。本会議ではより完成度の高いプロポーザルに仕上げるために、より多くの研究者で、3本のSPICAの科学目標、(1)宇宙初期銀河進化の解明、(2)近傍銀河の詳細観測により物理状態の解明、(3)原始惑星系円盤の観測による惑星系形成の解明、について忌憚のない、大変活発な議論が行われました。

これまで日本と欧州の互いの装置、科学目標であったものが、いよいよ1つのSPICAプロジェクトとして組みあがる時期にきている事が参加者全員に実感され、より多くの世界中の天文学者、そして人類にとって重要なプロジェクトにする事を誓い、2日間の会議は終了しました。

次回のSAFARIコンソーシアム会議は2016年10月にドイツで開催される予定です。 SAFARI コンソーシアムの PI(主任研究者)である Peter Roelfsema氏の「私の夢は、息子と共に SPICAの打上げを日本で見る事なんだ。」という言葉が印象に残ったSAFARIコンソーシアム会議でした。(浅野)

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SPICA/SMI(日本中間赤外装置) 国内技術会議・説明会 開催報告(2016年3月29日)

SMI_techws_20160329

2016年3月29日、名古屋大学にて、SPICA/SMI国内技術会議・説明会が開かれました。宇宙研・阪大・鹿児島大・京大・京産大・東大・東北大・名大から約40名が参加し、SMI (SPICA Mid-Infrared Instrument) の現状の共有と技術的な情報交換が行われました。 

まず阪大の芝井広教授による、SPICAの現状案・日欧役割分担案・今後のスケジュールについて説明のあと、名大の金田英宏教授らから、日本担当の中間赤外線装置 SMI の検討状況が説明されました。また、SPICAに関連しそうな要素技術の紹介・情報交換として、TAO望遠鏡の中間赤外線装置開発で培った技術の紹介(東大)や CGH (Computer Generated Hologram) による鏡面精度測定の紹介(名大)などがされました。さらに、SMIの現在の検討状況に対して、参加者から他プロジェクトでの経験に基づき、様々な角度からの有意義なご指摘をいただきました。最後の議論では、SPICA/SMIにこれまで深く関わってこれなかった大学が主体的に参加しやすい形・今後長年に渡り大学連合主体でプロジェクトを支えていく枠組みについて、多くの意見が交わされました。

SPICAプロジェクトの概要が固まり、SMIの技術課題・必要なタスクが明らかになってきました。こうした点に対し、国内の多くの大学間連携によって、主体的にSMIを支える枠組みのキックオフとして、重要な会議になりました。(石原)

    プログラム
  • 11:00-11:05 趣旨説明;金田
  • 11:05-11:15 プロジェクトの現状;芝井
  • 11:15-11:40 SMIの現状;金田
  • 11:40-12:00 技術1(検出器・フィルター・低温バッファアンプ);和田
  • 13:00-13:10 午前の整理;金田
  • 13:10-13:30 技術2(光学設計・感度計算);左近
  • 13:30-14:10 技術3(HRS);中川、猿楽、他
  • 14:10-14:20 技術4(極低温モーター);津村
  • 14:20-14:40 技術5(追加光学系);松尾
  • 14:40-15:00 関連技術1(他プロジェクト);有志
  • 15:00-15:10 関連技術2(光学試験);近藤
  • 15:10-15:20 関連技術3(検出器試験);石原
  • 15:20-15:40 全体スケジュール、予算計画、試験計画;中川
  • 16:00-17:00 議論、会議のまとめ、今後の予定
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日本天文学会SPICA特別セッション 「新しい SPICA が目指す天文学」開催報告

SPICA_ASJ_20160316

 首都大学東京南大沢キャンパスで開催された日本天文学会2016年春季年会の特別セッションとして、2016年3月16日午後3時40分から午後5時20分まで『SPICA 特別セッション:新しい SPICA が目指す天文学』が開催されました。開始時より会場に立ち見が出るほどの盛況ぶりで、250名を超える参加者のもと、SPICAミッションに対する関心の高さと期待感をひしひしと感じる現場となりました。

 まず、冒頭でJAXA ミッション定義審査により承認されて計画の概要がかたまった新しいSPICA計画について、プロジェクトのPIおよびchiefである大阪大学の芝井広教授よりプロジェクト現状の説明が行われました。特に、間近に迫る欧州宇宙機構 (ESA) Cosmic Vision のミドルクラス M5プロポーザル提出へ向けて、特別セッションの参加者に対して、新たなSPICA計画の活動を広く周知し、さまざまな時間スケールで積極的かつ能動的な貢献を期待するよびかけがなされました。次に、ヨーロッパ側観測装置SAFARIのPIであり、ESA Cosmic VisionのM5プロポザールのPIであるSRONのPeter Roelfsema氏から、ヨーロッパ側のサイエンスの興味とヨーロッパ側装置についての説明が行われました。続いて、日本側観測装置SMIのPIである名古屋大学の金田英宏教授より、日本側装置の現状についての報告が行われ、SPICA/SMIコンソーシアムへの積極的な協力の呼びかけがなされました。

 引き続き、特に重要な柱と位置づけられている遠方銀河原始惑星系円盤のサイエンストピックに焦点をあてて、それぞれアリゾナ大学の江上英一氏と、東京工業大学の野村英子准教授による講演が行われました。江上英一氏はSPICAチームのSPICAサイエンスタスクフォースのメンバーとして、また野村英子氏は光赤天連SPICAサイエンスタスクフォースのメンバーとして、これまでの日欧でのサイエンスの議論を牽引してこられました。

 参加者からは、系外惑星研究分野でSAFARIおよびSMI-HRSによるHDの定量を期待する声や、SAFARIおよびSMIで得られるダイナミックレンジに関する質問等まさにSPICAで行う実際の観測を意識した質疑応答がなされました。今回の特別セッションが、参加者にとって、SPICAの活動を自身の科学的興味と身近に関連させ、長期的にSPICAミッションに関わる良いきっかけとなることを、SPICAチーム一同心より切望しております。

なお、SPICAに関するご意見などがございましたら、SPICA広報担当 (E-mail: spica_public"アット"ir.isas.jaxa.jp) までお気軽にご連絡ください ("アット"を @ に変更してください)。

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SPICA特別セッションを開催します (2016年3月16日 日本天文学会春季年会にて)

2016年3月14-17日に首都大学東京で開催される日本天文学会2016年春季年会にて、SPICAチームは特別セッション「新しいSPICAが目指す天文学」(2016年3月16日 15:40-17:20 G会場)を企画しました。このセッションでは、SPICAの装置やサイエンスに関する最新情報をお伝えするとともに、皆様との議論・討論も行う予定です。以下にプログラムを示しますので、是非ともご参加ください。なお、詳しくは日本天文学会2016年春季年会のウェブページを、ご確認ください。

SPICA_Special_Session_2016ASJspring

プログラム

  1. 「プロジェクト現状」 芝井広 (大阪大学)
  2. 「ヨーロッパ側の状況とヨーロッパ側装置について」 Peter Roelfsema (SRON)
  3. 「日本側の装置の現状」 金田英宏 (名古屋大学)
  4. サイエンス
    1. 「SPICAによる遠方銀河の観測」 江上英一 (アリゾナ大学)
    2. 「SPICAによる惑星形成過程と物質進化の解明」 野村英子 (東京工 業大学)
  5. 総合討論

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ミッション定義審査合格

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宇宙科学研究所常田佐久所長が、世界の天文コミュニティに向けて2015年11月8日付でレターを発信し、 新SPICAがミッション定義審査に合格したことを報告しました。

レター全体をPDFで見る

(2015年 11月)

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新SPICAが重要な一歩 ! (ミッション定義審査終了)

SPICA_MDR

新しいSPICA計画が、ミッション定義審査委員会(JAXA宇宙研・宇宙理学委員会が設置し、計画の意義・目的・ 目標を審査)により11月6日付で承認され、計画の概要が固まりました。

新しいSPICAの科学目的は、"Enrichment of the Universe with metal and dust, leading to the formation of habitable worlds"、すなわち「宇宙が重元素と星間塵により多様で豊かな世界になり、生命居住可能な惑星世界をもたらした過程」を解明することと定義されました(図参照)。この目的を達成するために、口径 2.5 メートルで極低温冷却されたスペース赤外線望遠鏡に、中間赤外線・遠赤外線帯の最新鋭の観測装置を搭載し、天文観測最適地である第2ラグランジュ点軌道に打ち上げて、きわめて高い感度で銀河や星惑星形成天体などの観測を行います。これには、わが国のお家芸であるスペースでの望遠鏡冷却技術と、日本と欧州の高度な望遠鏡・観測装置技術が活かされます。「あかり」衛星や米国Spitzer衛星の10倍の集光力で、JWSTとALMAが観測できない中間赤外線・遠赤外線帯の高感度観測が実現できるため、きわめて大きい研究成果が期待されます。

約2年前に、従来のSPICA計画ではスタートできないことが明らかになりました。しかしながら、極低温冷却赤外線望遠鏡が天文学に果たす役割の重要性を再確認し、日欧の多くの研究者と双方の宇宙機関が精力的に検討を続け、ようやく新しいSPICA計画を定めることができました。この間、科学目的の再定義、国際協力の枠組みと分担の変更、望遠鏡口径の縮小と観測装置の仕様変更・方式変更など、大幅な計画変更がなされました。その結果、従来よりも感度の向上が期待できるなど、より価値の高い、実現可能な計画になったと判断しています。

今回終了したミッション定義審査の合格は、極めて重要な一歩です。次にはESAへのプロジェクト提案が控えています。日本国内外で参加・協力・支援していただいた多くのメンバー・研究者・コミュニティーの方々の努力に感謝するとともに、さらに良いプロジェクトにして実現するために、今後も積極的な参加・支援をお願いいたします。

(2015年 11月)

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SAFARIコンソーシアム会議 (2015年9月30日, 10月1日, フランス) 報告

SAFARI_consortium_2015Autumn

2015年9月30日, 10月1日の2日間にわたり、フランス・ボルドーに於いてSAFARIコンソーシアムの会議が70余名の参加者を得て行われました。

半年毎に定期的に開催される今回のコンソーシアム会議の最大の目的は、2016年春に迫っている欧州宇宙機構(ESA) Cosmic Visionのミドルクラス "M5" へのプロポーザル提出へ向けての、日本及び参加各国の準備状況の確認と、各国メンバーが一堂に会しての科学検討の深化でした。 このため最初に話題となったのは宇宙科学研究所で行われているミッション定義審査の進行状況でしたが、会議冒頭のセッションにて宇宙科学研究所国際調整主幹の藤本正樹氏より、審査プロセスが順調に推移し、間もなく無事審査を終えられる見通しである旨の報告があり、欧州各国メンバーからもプロジェクト全体の進展を意味する大きな一歩であるとの好意的な反応を得ました。

日本のSPICAチームからは、尾中(東京大学)より、宇宙科学研究所所長の諮問により2015年7月にパリにて開催された 国際科学評価委員会の結果について、総合評価としてSPICA計画をぜひ推進すべしとの高い評価を得たこと、また科学目的の各項目への評価委員からのコメントについて、M5プロポーザルを含む今後のプロジェクト計画策定に活かしていくことを報告しました。芝井(大阪大学)、金田(名古屋大学)からは日本が開発主担当である中間赤外線観測装置について、装置仕様の詳細検討状況、またその仕様を活かした特徴的な観測計画について報告を行いました。これらの発表には海外参加者からの質問が多数寄せられ、日本の開発する観測装置に対する期待が非常に大きいことを伺わせました。

先ごろ欧州宇宙機構(ESA)から、 M5の想定スケジュール(ESAのホームページへジャンプ) が公式にアナウンスされており、M5プロポーザルの準備は既に待ったなしの段階にあります。今回の会議に先立ち、既にSPICAチームはM5にプロポーズする意志がある旨の"Statements of Interest (SoI)"をESA宛に提出しました。 これらの状況を受け、プロポーザルの主要部分となるSPICAの科学目的の記述の完成度を更に高めるべく、3つの科学の柱(宇宙初期銀河進化の解明、近傍銀河の詳細観測による物理状態の解明、原始惑星系円盤の観測による惑星系形成過程の解明)の各グループに分かれての個別ミーティングを半日間にわたって密に行いました。2016年4月に想定されるプロポーザル提出へ向け、今後は週単位での電話会議、及び原稿作成のマイルストーンが設定されています。M5プロポーザルの準備へ向けてギアを一段入れ替えてのスパートがここから始まることになります。

ESAによるミッション選定を無事受けるために、特に欧州に於ける天文学者コミュニティからの指示を広く受けるための努力が引き続き重要となります。このために宇宙科学研究所のミッション定義審査の進行状況を含め、プロジェクト全体の状況を各国コミュニティに広く伝えて行くこと、そしてSPICAの強力な科学的価値を更に多くの天文学者に宣伝して行くことを確認し、今回のコンソーシアム会議は幕を閉じじました。

次回のコンソーシアム会議はM5プロポーザル提出直前の2016年3月に、オランダにて開催されます。

(2015年10月, 土井)

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日本天文学会 2015年 秋季年会 (2015年 9月 9-11日)

SPICA_AstroFall_2015

 日本天文学会の2015年秋季年会が、2015年9月9-11日の3日間にわたり、兵庫県神戸市にある甲南大学で開催されました。 SPICAチームは、芝井代表(大阪大学)が「次世代赤外線天文衛星SPICA:プロジェクト再定義」という題目で、 ここ数年取り組んできた国際協力の枠組みの改革とそれに伴う望遠鏡や観測装置の性能の変更、科学目標の再定義と先鋭化 などの活動に関する口頭講演を行いました。この講演の中では、7月に行われた 国際科学評価で出された10項目からなる Executive Summaryについても報告しました。 この他、中川(宇宙研)が冷却系を中心としたSPICAのシステム技術検討の現状について、 金田(名古屋大学)がプロジェクト再定義に対応した中間赤外線観測装置SMIの設計について、 土井(東京大学)が高感度化のためにGratingを採用することとしたSAFARIの現状について、 鈴木(宇宙研)がSAFARIの高感度化に欠かせない超低雑音のTransition Edge Sensor(TES)の開発について 口頭講演を行いました。 また、片坐(宇宙研)が望遠鏡と焦点面観測装置に関するポスターを発表しました。 これらの資料は、SPICAのホームページから公開する予定です。

発表資料へのリンク

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宇宙科学研究所 特別公開 (2015年7月24,25日)

ISAS_OpenCampus_2015

 2015年7月24,25の二日間にわたり、宇宙科学研究所(宇宙研)の特別公開が開催されました。この特別公開は、宇宙研の夏の恒例行事であり、宇宙研が進める様々なプロジェクトを身をもって体験できる、とても楽しいイベントです。SPICAチームでは、3Dプリンタを使ったSPICAの模型(1/30サイズ)や解説ポスターなどの展示を用意して、この特別公開に臨みました。また和田 武彦助教がSPICAに関するミニ講演を行い、参加者の皆様から大変活発な質問をいただきました。

 写真は、SPICAの展示の作成に協力してくれた大学院生の高橋 葵さん (総研大; 下), 小島 拓也さん (東京大; 左上), 道井 亮介さん (東京大; 中上), 佐野 圭 (東京大; 右上)さんです。高橋さんはSPICAに大変期待しているそうで、「私は、太陽系外の惑星系やその観測を行うための装置の研究をしています。SPICAを用いて太陽系外にある様々な段階の惑星系を観測することで、惑星系の起源やその多様性を明らかにしたいと思っています。」と、話してくれました。

 なお、SPICAの模型の作成にあたり、宇宙研の久保田研究室の皆様に多大なるご指導を頂きました。

(2015年7月 磯部, 高橋)

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SPICA 国際科学評価 開催 (2015年7月15日, パリ)

SPICA_preview_2015

 2015年7月15日にフランス・パリにて、SPICA国際評価委員会が開催されました。これは、SPICAによるサイエンスを評価するための 宇宙科学研究所所長の諮問委員会です。 評価委員は日欧米の第一線の科学者である下記8名の方々です; Rowan-Robinson教授 (英国 インペリアル・カレッジ・ロンドン), Bureau教授 (英国 オックスフォード大学), Elbaz博士 (フランス 原子力・代替エネルギー庁 サクレーセンター), Barthel教授 (オランダ グローニンゲン大学 カプタイン天文学研究所), Jones博士 (フランス 国立科学研究センター スペース天体物理学研究所), Harwit名誉教授 (米国 コーネル大学), Helou所長 (米国 カリフォルニア工科大学 赤外線データ処理解析センター, IPAC), 満田教授 (日本 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)。

 SPICA科学チームからは、日本から7名が、オランダから2名が参加しました; 芝井教授(大阪大学), 尾中教授(東京大学)、金田教授(名古屋大学), 河野教授(東京大学), 石原講師(名古屋大学), 和田助教(宇宙科学研究所), 磯部博士(宇宙科学研究所), Roelfsema博士(オランダ宇宙研究機関), Sibthorpe博士(オランダ宇宙研究機関)。 また、宇宙科学研究所からは、常田所長, 藤本国際調整主幹, 上野宇宙科学プログラム室長, 船木国際調整主幹補佐, 科学推進部より山崎さん, 朝倉さん, パリ駐在員事務所から末永所長代理が出席しました。

 会場は、セーヌ川ほとり、エッフェル塔の近くにある、国際会議場CAP15です。パリ市の気温は、おりからの熱波で32度まで上昇しましたが、それと同様、白熱した議論が展開されました。常田所長からの開催の挨拶に続き、藤本主幹のリードにより評価委員会が始まりました。まず、評価委員長として、Helou IPAC所長が選出され、続いて、SPICAチームによるプレゼンテーションが始まりました。プレゼンテーションは、議論を交えつつ、昼食を挟み、朝9時から夕方16時まで行なわれました。その後、評価委員のみによる会議が行なわれ、最後に10項目からなるExecutive summaryが発表されました。評価委員会終了後、参加者全員に加え、東覚パリ駐在員事務所所長も駆けつけ、シャンパンと洋風菓子に彩られたカクテルパーティーが和やかな雰囲気で開かれました。

(2015年7月 和田)

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SPICAの新デザイン

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2014年11-12月に欧州宇宙機関(ESA)とJAXAが協力して、「次世代冷却望遠鏡に関する技術検討」が実施されました。この結果を受けて、SPICAの科学目的およびデザインの見直しを行いました。現在、左図に示すような口径2.5 mの冷却望遠鏡に、焦点面観測装置として中間赤外線から遠赤外線帯域の超高感度分光器を搭載した、新しいデザインのSPICAを検討しています。SPICAの肝である望遠鏡や焦点面観測装置の冷却には、Planck衛星(ESAのホームページへジャンプ)で実績のある"V-groove式熱シールド"に日本の冷凍機システムを組み合わせて、観測に必要な極低温(望遠鏡は絶対温度8 K以下、観測装置は2 - 4 K)を実現します。SPICAチームでは、これをベースラインとして、より詳細な技術検討を進めています。

また、これにともなって、SPICAのホームページに載っているSPICAの模式図を一新しました。ぜひ、SPICAのホームページを探検してみて下さい。

(2015年6月 SPICAチーム)

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SAFARIコンソーシアム会議 (オランダ, 2015/03/25, 26) 報告

SAFARI2015spring

 2015年3月25, 26日の2日間にわたりオランダ・ユトレヒトでSAFARI コンソーシアムの会議が開かれた。 SAFARI コンソーシアム会議は毎年2回、3月と9月に行われ、 サイエンスの議論と装置開発の報告が定期的に行われており、 その定期会議の一つとして開催された。 今回の会議には、ヨーロッパ各国から約60名の参加者に加え、 日本から9名, カナダから2名, アメリカ, 台湾からそれぞれ1名の参加者があった。 SAFARIと名付けられてはいるが、 今回は、 昨年末に欧州宇宙機構(ESA)の技術検討施設(Concurrent Design Facility; CDF)で行われた 「次世代冷却赤外線望遠鏡に関する技術検討」の結果の報告に引き続き、 宇宙科学研究所の国際調整主幹の藤本正樹氏より SPICAへの宇宙科学研究所の取り組みの熱意を示す講演があり、 これを受ける形でESA Cosmic VisionのミドルクラスM5へのプロポーザルに向けた議論が、 狭い会場で熱心に行われた。 今回の会議での重要事項は、

  • サイエンスからの要求を満たす輝線検出感度の達成のため、 SAFARIがフーリエ分光器のデザインから回折格子への変更を確認しこと
  • そのデザインの概要が示されたこととそれに伴い、 JPL (Jet Propulsion Laboratory, NASA) の Matt Bradford 氏がコンソーシアムのメンバーに加わることが報告されたこと
  • 口径 2.5 m, 温度 8 Kの望遠鏡をベースラインとして、M5のプロポーザルを準備することで一致したこと
の3点であった。(尾中)
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第3回 SPICA コアサイエンス会議 開催

Core Science 201501

 2015年1月12 - 13日の二日間にわたり、 第3回目のSPICAコアサイエンス会議を大阪大学中之島センターで行いました。 今回の会議の主目的は、2014年11月から12月にかけてオランダにある欧州宇宙機構 の技術検討施設(Concurrent Design Facility; CDF)で行われたミッションの 技術検討結果を受けて、 SPICAのサイエンスをより明確にすることでした。 会議にはオランダ、イギリス、フランス、ドイツから8名、アメリカから2名の 研究者を含む総勢39名が参加し、コアサイエンスの議論を集中的に行いました。 厳しい中にも有効な議論を活発に行いました (左上写真)。 会議の最後には、ヨーロッパ側のPI (Principal Investigator) である Peter Roelfsema氏と日本側のPIである芝井広氏が、 固い握手を交しました (左下写真)。 開催にあたっては、大阪大学からサポートを頂きました。 また休日にもかかわらず大阪大学の皆様には会場の準備を手伝って頂きました。 ここに感謝致します。

(尾中)

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第15回 宇宙科学シンポジウム 報告

SSS15 SPICA

 2015年1月6, 7日の二日間にわたり、 第15回宇宙科学シンポジウム が宇宙科学研究所にて開催されました。 宇宙科学シンポジウムは、宇宙科学研究所の新年最初の重要な恒例行事となっており、 理学・工学を問わず、進行中のミッションや将来計画に関する様々な報告が行われています。 SPICAからは、芝井代表から「SPICA計画の進捗と現在の状況」という講演を行うとともに、 昨年度まで行われていたリスク低減計画の成果報告を中心とする 7件のポスター講演 を行いました。 講演資料は、SPICAのホームページから公開する予定です。

 写真は、小型望遠鏡評価試験 の成果に関するポスターの解説をする山中阿砂さん(名古屋大学 修士1年生)で、 山中さんは大学4年生の頃からこの実験に参加してきました。 山中さんは、 「SPICAの大口径望遠鏡の性能評価は、まだ技術的な困難があります。 この実験では、小型望遠鏡を用いてその困難を解決するための "スティッチング(波面縫い合せ)法"を確立しつつあります。 また今回のポスターでは、 評価に使う平面鏡の歪みを補正し測定の精度を向上する "Shearing法"についても報告しています。 実験内容はなかなか地味ですが、とても面白い解析結果が出てきます」 と話してくれました。(磯部, 山中)

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第58回宇宙科学技術連合講演会 (2014/11/12-14 長崎)

Ukaren58 SPICA

 2014年11月12 - 14日に長崎で開催された第58回宇宙科学技術連合講演会に参加し、 「熱制御」のセッションにおいて、SPICA機械式冷凍機の開発状況について口頭発表を行ってきました。

 SPICAは搭載する望遠鏡と焦点面観測装置を絶対温度6K以下(-267℃以下)に冷却することで、 極限まで熱雑音を下げ、これまでにない高感度・高分解能の赤外線天文観測を行う挑戦的なミッションです。 その前身となる「あかり(2006年)」では、液体ヘリウムを寒剤として望遠鏡を冷却しておりましたが、 SPICAでは深宇宙への放射冷却と機械式冷凍機による能動的冷却を積極的に利用した無寒剤冷却システムを 採用します。これにより大型の望遠鏡や観測装置を搭載することができ、 且つ、3年以上の長期間の軌道上観測を実現します。

 本講演では、SPICAの機械式冷凍機システムの設計コンセプトを始めとして、各冷凍機 (20K級2段スターリング冷凍機、1K級・ 4K級ジュール・トムソン冷凍機)の開発状況について報告しました。 20K級2段スターリング冷凍機および4K級ジュール・トムソン冷凍機は、X線天文観測衛星ASTRO-Hにも搭載予定で、 現在フライトモデルの検証試験を実施しています。また、エンジニアリングモデルを用いた寿命評価試験では 4.5Kの低温を維持した状態で要求仕様の3年の総駆動時間を達成しました。 1K級ジュール・トムソン冷凍機は、JAXA戦略コンポーネントの枠組み (注) で開発を進めており、 エンジニアリングモデルにより、打ち上げ時の機械環境や軌道上での熱真空環境に対する耐性を確認しました。 現在、1.7Kでの冷却性能試験および寿命評価試験を実施するための準備を進めています。

 質疑応答では、SPICA固有の冷凍機搭載方法や課題、冷凍機システムの冗長系の考え方についての 質問がありました。他にも、 SPICAミッション部冷却系の熱・構造設計やその要素技術開発の発表が3件 あり、そこでも活発な質疑応答が行われました。 その結果、SPICAというチャレンジングなミッションを実現するためのキー技術に 大きな関心があることを伺い知ることができました。(佐藤)


注: JAXAが開発する宇宙機システムに、 原則としてある程度の期間「使い続ける」ことを約束する「共通的」なコンポーネントとして、 1. 宇宙機システムが国際競争力を得るために必須のもの、 2. 我が国の自在な宇宙活動に不可欠なもの、 3. 我が国の得意分野で世界の宇宙活動に貢献できるもの、 を「戦略コンポーネント」と位置付け、平成 21 年度より重点的に研究開発投資を行ってきた。

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極低温モーター開発中(2014/10/16)

Cryomotor working

 SPICAの観測装置は絶対温度4度(-269度)の極低温まで冷やされ、その極低温環境下でフィルターを交換したりシャッターを閉じたりします。このために、極低温度動作するモーターが必要になります。SPICAの前身である赤外線天文衛星「あかり」でも極低温モーターを使用していましたが、SPICA用の極低温モーターでは、「あかり」用の極低温モータよりも低発熱(より少ない電力で動く)で高トルク(より力がある)なモーターが必要です。そこで、モーター内部で使われている磁石をより強力な物に変えたり、内部の形状を最適化するなどして、「あかり」で用いられモーターよりも「低発熱で高トルク」なモーターを作りました。

 写真は住友重機械工業株式会社で作られたSPICA用の極低温モーターの試作品です。この試作モーターを実際に液体ヘリウムで絶対温度4度まで冷却してトルク測定した所、「あかり」モーターよりも少ない電流(低発熱)でより大きなトルクが出ている事が確認されました。まだ試作品の段階なので、本物のSPICA衛星に搭載されるまでには改良の余地がまだまだあるのですが、このように、SPICA搭載の観測装置の開発の着実に進んでいます。(津村)

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小型望遠鏡評価試験終了(2014/09/25-26)

Stitching Measurement back off

 2014年9月26日、2009年より筑波宇宙センター6mφ放射計スペースチャンバ棟で続けてきた、SPICA望遠鏡光学評価のための予備試験を終了し装置類を撤収しました。SPICAのような巨大な望遠鏡の光学評価をおこなうには特殊な手法が必要で、小型の望遠鏡(口径800mmφ)を用いてスティッチング法と呼ばれる評価方法を開発することが目的でした。これは、望遠鏡開口の部分的な波面測定を多数行い、それをつなぎあわせて望遠鏡全体の評価を行うというものです。今年2月には、6mφ放射計スペースチャンバに入れての真空環境での評価試験も実施しました。本来は極低温環境下での評価試験も実施する予定でしたが、SPICAの役割分担の見直しに伴い望遠鏡の評価試験が欧州に移ったため、6mφ放射計スペースチャンバ棟での試験は終了しました。今後は試験設備を名古屋大学に移設し、評価方法のさらなる研究開発を続ける予定です。(川田)

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SAFARIコンソシアム会議@Oxford(2014/09/16-17)

SAFARI consortium meeting 2014 Autumn

 2014年9月16日、17日の2日間、恒例のSAFARIコンソーシアム会議が開かれました。毎年、春と秋に開催されるこの会議は、春は取りまとめ国であるオランダで開かれ、秋はメンバー国の持ち回りで開かれます。今年はイギリスが担当し、Oxford大学にて開催されました。会議では、SPICAによるサイエンスの議論とSAFARI観測装置の技術的な議論が活発に行われました。今回はこれに加えて、JAXA宇宙科学研究所の所長とESAの科学計画調整担当責任者が出席し、それぞれの立場でのSPICAに対する対応状況について話がありました。

 日本人9人を含め、総勢60名を超える参加があり、非常に活発な議論がなされ、SPICA推進に向けて士気が高まりました。(土井)

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