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SPICA が明らかにする新しい宇宙史

私たちの宇宙はどの様に誕生し、進化してきたのか。地球、そして我々生物はどこから、どのように生まれたてきたのか。天文学の究極の目的はこの答えを明らかにする事です。

次世代赤外線天文衛星SPICA (Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics)は、これらの答えに迫る口径2.5 m の大型冷却式宇宙望遠鏡です。SPICA は銀河の進化、そして惑星系の形成という2つの観点からこれらの答えに迫ります。


図1: SPICAの概観の想像図(提供:JAXA/SPICA Team)
背景画像は「あかり」で撮影した中間赤外線で見たはくちょう座領域(提供:名古屋大学)


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銀河の進化

現在の多様な物質で満ちあふれた宇宙は、どのようにして作られたのでしょうか?

宇宙は約138億年前にビックバンによって誕生したと考えられています。 生まれた直後の宇宙は、水素やヘリウムといった極めて軽い2種類の元素のみからなる世界でした。 一方、現在の宇宙は、数多くの銀河、星、惑星が存在し、様々な種類のガスや固体微粒子(塵、ダスト)で覆われ、そして地球では有機物で形作られた生命が繁栄するという、多様な世界になっています。 この豊かな宇宙の形成には、銀河の中の恒星で水素やヘリウムよりも重い元素が生成され、星の死とともにまき散らされ、さらにその物質を材料に星が誕生するというサイクルが、重要な役割を果たしていると考えられます。 しかし、これまで盛んに行われてきた可視光(目に見える光)による観測では、重元素から作られた塵自身が光を遮ってしまうため、宇宙で最も重元素が作られた時代の全貌を明らかにすることができていませんでした。

SPICA は、塵に遮られにくい、また塵自身が輝いている赤外線で、深宇宙の銀河を観測することができます。 その非常に高い感度によって、暗い赤外線をとらえ、また、塵の成分を詳細に分析することが可能になります。 遠方、つまり初期の宇宙における塵を検出したり、星の生成が最も活発だった時代の、塵に埋もれた銀河を調べたりすることで、 塵に隠された星形成や超巨大ブラックホールの成長の歴史や、重元素とそこから作られる塵や有機物が、いつ、どこで、どのように作られてきたかを明らかにします。


図2: SPICAは、塵やガスからの赤外線放射を詳しく分析することで、宇宙初期の塵の
探索を行うとともに、星が盛んに誕生していた時代の銀河、および近傍の銀河の物質
を調べます。それにより、宇宙の歴史の中で銀河がどのように誕生・進化してきたか
を明らかにします。(提供:SPICA Team)


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惑星系の形成

私たちの住む地球や太陽系は、いつ、どのように誕生したのでしょうか。

1995年にペガスス座51番星のまわりを回る惑星が発見されて以来、太陽以外の恒星が作る惑星系(太陽系外惑星系)が数多く見つかっています。 今では、一つのの星は少なくとも一つの惑星を持つだろうと推定されています。 さらに、大きさと表面の温度が地球に似ており、生命が誕生できそうな惑星(ハビタブルプラネット)まで発見されています。 ところが、これまでに見つかっている惑星の中には、太陽系の惑星とは似ても似つかないものが多く含まれています。 そのため、太陽系は宇宙において特別な存在なのか、もし特別ならば、その起源は何かという大きな謎が、新たに生じています。 この謎を解き明かすためには、宇宙に存在する惑星系が、どのような条件、どのようなメカニズムで形成されてきたのかを理解するための研究が重要になります。

SPICAを用いると、惑星大気の材料となるガスの量や成分を調べたり、岩石の源となる塵がどのような鉱物でできているかを詳しく分析したりすることができます。 生まれたばかりの星から、太陽のような年齢の星に至るまで、幅広い年齢の星を観測し、もともと宇宙にあった物質がどのように惑星にとり込まれ、どのように惑星系が誕生・進化するのかを明らかにします。


図3: SPICAは星が生まれる環境(磁場Bなど)を調べます。さらに、生まれた星を
とり囲む原始惑星系円盤でガスや固体の塵、水・水蒸気の分布および性質を調べ、
惑星系が誕生する様子を明らかにします。 (提供:SPICA Team)


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